第68章 春十日
「十分だよ。こうして僕の傍に莉緖が居てくれるだけで、幸せだと思うから。少々人間不信だった僕を、こんなに丸め込んでくれるのは莉緖だったから。ありがとう、莉緖。」
何故か、私がこの後号泣してアオイにしがみついて泣いてしまった。アオイ大好きって言葉を連呼して。
「フフ、嬉しいな。こんなにも大好きだって、愛の告白をされるなんて。そっか・・・これは、僕へのご褒美なのかもしれないなぁ。ってことで・・・キスしていい?」
「はい?」
何故、突然そんな話しに?
「少しは僕に堕ちてくれたってことだよね?言わなかったっけ?僕に堕ちてくれたら、深く愛してあげるって。もっと僕に堕ちてくれる様に僕も努力するよ。だから、僕に莉緖の唇くれないかな?」
泣いていた涙は引っ込んだ。そして、今の私は赤面中だ。だって、アオイの顔が近いんだもの。優しい手が髪を撫で、頬を撫でる。
何って色っぽい目で私を見詰めるのだろう。これは、アレ?色仕掛けって事?心の中で気弱な私が頼りなく悲鳴を上げている。
「莉緖、僕に甘くて美味しそうな唇を頂戴。」
「や・・・優しくしてね?」
アオイは目を丸くした後、色気たっぷりに微笑んでは勿論だと頷いた。そして、触れただけの唇は想像以上にドキドキして柔らかくて甘かった気がする。
気がする・・・半分以上はよく覚えていない。心臓が痛いくらいバクバクしている。でも、何かしっくりくるんだ。
そして離れた唇に、何故か名残惜しさを感じてしまっていた。少し寂しい・・・。
「可愛いなぁ・・・僕の莉緖は。好きだよ、莉緖。」
再び触れた唇は、ドキドキを加速させたけれどその反面離れたくなくてアオイにしがみついていた。抱き合いながら何度も触れるだけのキスをする私たち。
「・・・何コレ、病みつきになる。」
「えっ?病みつきって?」
「莉緖とのキス。こんなに心臓がドキドキして痛いくらいなのに、凄く嬉しくて・・・ほら、僕がドキドキしているの分かる?」
胸に耳を当てれば、早いアオイの鼓動が聞こえた。
「ホントだ・・・でも、私も凄くドキドキしてる。」
「僕と同じだ。あ~・・・でも、僕の方が先に深く堕とされちゃったなぁ。」
「えっ?」
「全然、後悔なんてないけど。ねぇ、僕をお婿さんにしてくれない?きっと・・・莉緖を失ったら、僕はダメになる。だから、ゆっくりでいいから考えておいて?」