第7章 農業生活七日目 (R若干指定)
「莉亜?」
突然のリヒトの声に、体を跳ねさせた私。振り返ると同時に、至近距離にリヒトの顔。思わず後退る私を、リヒトの腕がそれを引き留めた。
「どうして僕から逃げるの?」
私は何も答えなかった。今のリヒトは、蜂蜜色の瞳が不安で揺れている様に見えたから。
「ごめん・・・。知らなかったとはいえ、莉亜を傷付けた。ケビンさんに話は聞いた。ケビンさんと契約することになった経緯を。」
「・・・そう。」
「後悔してる?僕を選んだこと。」
私はリヒトの体に腕を回した。ギュッと抱き着く。
「私のせいで、リヒトが嫌な思いをするかもしれない。」
「えっ?」
「リヒトにとって、あの双子は大事な幼馴染みでしょう?」
リヒトは、大きく息を吐いた。
「ねぇ・・・忘れてる?僕が対人願望なかったこと。今でも、それは変わらない。」
「えっ?じゃあ・・・。」
「そう・・・何でだろうね?こんなに・・・莉亜に拒否られる事が怖いって思うなんて。」
私はリヒトの顔を見た。眉を八の字にして、不安に押しつぶされそうな顔をしていたことに驚かされた。
「拒否なんてしないよ?私が嫌なのは、リヒトが嫌な思いをすることだよ。だって、好きな人には笑ってて欲しい。そう思うものでしょ?」
「莉亜・・・。うん、そうだね。莉亜の言葉は温かいな。」
ん?何か・・・スリスリされてる。余計に溺愛度が増した気がする。
「莉亜?」
ん?何か・・・顔が近い。蜂蜜色の瞳は、もう色香を帯びてる?
抱き締められた腕の力が強く、リヒトの舌は私の口の中を犯す。えっと・・・何か、火を点けた?さっきまでのリヒトは、何処へ行ったの?
やがて、名残惜しそうにしながらも、私の下唇をチュッと吸ってから唇が離れた。
「好きだよ、莉亜。」
溺愛を含んだその瞳が、甘く私を見詰める。そして私はと言うと・・・羞恥に顔が真っ赤だったと思う。
「・・・私も。」
何か、負けた気がする。さて、双子の訪問はどうなることやら。
「お昼から、予定ある?無いなら、ウチの店、見に行かない?」
「うん。」
どんなお店なんだろう?ちょっと、興味ある。ゲーム内では、空き家とか細かい住人のことまで出ていなかったし。でも、どんなメニューを扱うのだろう?
「メニューって、どんなものなの?」
「日替わりメニューだよ。」