第63章 春五日
「病院に行く?」
「あぁ、そのつもり。」
「私は畑を見回った後、製粉とジャム作りかな。」
「病院には?」
少し考えて、お昼過ぎに行くと言った。
でも、この時、まさかあんな状況を目の当たりにするとはこの時は思ってもみなかった。
自分で病院に行くと言ったのに、私にハグしては中々行こうとしないアオイ。キス魔も降臨しては、散々唇を貪られる始末。
「連れて行きたい・・・。」
駄々を捏ねてから、渋々と病院へと雨の中出向て行った。
本当に、アオイに甘えられていると思う。
パパがママに甘えているのと同じくらい?我が親ながら、子供の私たちよりママが大事なパパ。周りの親とは違って、現役のままラブラブだ。
アオイとだったら、そんな風にずっと仲良くいられるだろうか?さて、私も今日はビニールハウスへと行こう。
収穫できる作物を採集しては、出荷箱に入れておく。その後は、お弁当を作ってアオイがいる病院へと雨の中向かった。
貰った合鍵でドアを解錠しては、アオイの名を呼びながら中に入った。奥の診察室には、何故かレイチェルがいた。額に怪我をした様で、アオイが治療していた。
レイチェルは私に気付くと、思い切り睨みつけては凄い剣幕で罵声を浴びせ出した。金切声を上げるレイチェルの言い分がよく聞き取れなかったけれど、怪我をしたのが私のせいだと言っていることだけは辛うじて聞き取れた。
「あのさ、何度も言っているけど自業自得。莉緖を恨むのはお門違いだ。ほら、治療は終わったからさっさと帰ってくれ。その怪我は一週間もあれば直るし後も残らない。」
「私のこの綺麗な顔を傷物にされたのよ?だったら、責任取って貰わなくちゃ。この怪我の原因は莉緖のせいなんだから、変わってアオイさんが私の恋人になってよ。そうしたら、訴えずに許してあげなくもないわ!!」
どういう解釈なんだろう?それに、私のせいだってどういうことなんだろう?
アオイはズイッとレイチェルに顔を近付けた。アオイがその気になったと勘違いしたレイチェルは、ドヤ顔で私に視線だけを向けた。
「なぁ・・・昨晩は、あの観光客と寝たんだろ?」
時間が止まったかの様に、レイチェルは目を見開き動きが止まったまま。段々と顔色を変えたけれど、どうやら直ぐに持ち直した様だ。
「な、何を言って・・・。」
「赤いシャツを着た派手な見た目の観光客の事だ。」
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