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牧場物語生活へトリップ!?

第62章 春四日


続けてモグモグと咀嚼していると、隣りに座った人に目を向けた。観光客らしい若い男性は、ジィっと咀嚼する私を見ている。

最後の一口を口に入れよく噛んでから飲み込む。

「ねぇ、キミも観光でここに来てるの?今食べていたの何?美味しそうに食べているのを見たら、俺も食べたくなったんだよね。俺が奢るから一緒にもう一個食べない?」
「観光の方なんですね。自然豊かなところなので、ゆっくり散策でも楽しんでください。」
「それって、一緒に散策しようって誘ってる?」
「まさか!?私、この村の住人ですから。あ、お帰りなさい。」

目の前に立つアオイに気付き、ベンチから立ち上がった。アオイは何も言わず、高い位置から観光客の男性を見下ろしている。冷やかなアオイの視線に居づらくなったのか、そそくさと逃げて行った。

少し離れた場所には、男性の友人らしき二人組がいた。アオイの絶対零度の眼差しで、三人も住人相手に分が悪いと思ったのか立ち去った。

「虫除け必要だよな。」
「虫除け?」
「何でもない。ほら、飲み物。」
「ありがとう。いただきます。」

爽やかな喉越しのいい優しい味わいのお茶に、私はすっかり虜になった。家のお茶も飲んでみよう。

「次、行くか。ほら、手。」
「うん。」

アオイの手を握り締め、次は工芸のお店。そこにあったのは、綺麗な彫刻が施された櫛が並んでいた。少し値が張るが欲しくなったので購入を決めた。

アオイは店の奥で何かを見ている。そっと覗き込むと、見ていたのが宝飾品だと分かった。そう言えば、お医者さんだけどピアスもしているし、ネックレスも付けているお洒落さんだ。

「何か気にったのあった?」
「あぁ、莉緖か。このリングの彫刻がいいなと思って。持ってたの全部売っぱらったから、丁度新しいのが欲しかったんだよな。」

全部ってところに引っかかりを感じたけれど、私は何も言わなかった。

「なぁ、莉緖。莉緖ならどっち選ぶ?」

アオイの掌には二種類のリング。どちらも彫刻が素晴らしかったけれど、薔薇の模様に目を奪われたので男性用だけどそっちを選択した。

「分かった。買って来るから待ってて。あ、変なのに絡まれたら俺を呼べよ?」

店員に声を掛ければ、支払いをしてそのまま自身の指に嵌めていたアオイ。

「莉緖、手出して。左手。」
「こう?」

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