第62章 春四日
そう思ってた。でも、思いの外、状況は悪い方向に向いている気がする。その事が凄く怖くなった。
「大丈夫だ。莉緖に文句言うヤツがいたら、俺が蹴散らしてやるから。莉緖は俺の大事な恋人なんだ。俺に守られていればいい。」
「ありがとう。」
「そこは、大好きアオイ。私をお嫁さんにして!!じゃないのか?・・・って、冗談だ。俺は莉緖の思いを尊重する。だから、自信持っていればいい。俺はどんな時でも味方だ。」
「大好きアオイ。でも、お嫁さんはもうちょっと待って。」
そう言うと、アオイは笑ってくれた。
「で、どうする?デートにいくか?それとも、家でイチャイチャしつつ甘やかして欲しいのならそれでもいいけど。」
「えっ?・・・デートで。」
「ちょっと考えたな?ま、デートがいいって言うならそうしよう。」
「あ、でも・・・デートしながら甘やかしてくれても・・・いいかも。」
ポツリと呟けば、またアオイは笑った。
「分かったよ。俺の未来の嫁の為だ、幾らでも甘やかしてやるよ。あ~、莉緖は素直で可愛いなぁ。」
何故か、ご機嫌なアオイである。
デートの為に着替えて、村の店が並ぶエリアへと向かった。アオイに手を引かれ、私は幸せを噛み締めつつ散策。
村の土産店には、村の産物や加工品、簡単なテイクアウト用の食べ物などが並んでいた。
「なぁ、莉緖。このタオルって、莉緖のところの布地じゃないのか?」
見せてくれたのはカラフルなカラーのタオルが鎮座していた。ウチが出荷した布地を専門の店で加工し、タオルにしたものだった。
「やっぱり、この肌触り良いよなぁ。」
「ありがとう。」
「あ、こっちにある野菜セットって莉緖のとこのだろ?」
春野菜を数種類袋詰めされたものが並んでいる。元々幾つあったか知らないけれど、私たちの目の前で最後の二袋が売れていった。どうやらリピーターらしい。
更に、完売した事を知った後で来たお客が、残念そうな顔をして帰って行っていた。
「ん?この蒸かしたまんじゅう美味そう。」
「そうだね。美味しそう。」
アオイが買ってくれて、外のベンチで並んで食べる。
「んっ、肉と野菜のブレンド具合もいいし美味い。」
「うん、美味しいね。」
「あ、飲み物買ってくるからここで待ってて。」
確か、店内には春の茶葉で作ったお茶を売っていた。