第62章 春四日
「ゴッホは宿主だから謝罪に来るのは分からなくはないが、取引きを再開する前に遣らないといけない事があるだろう?もし、ここで莉緖が承諾すれば、レイチェルのことは無かったことにするつもりか?それは幾らなんでも、莉緖を馬鹿にしているだろうが。」
「それは・・・。」
「二人が親を亡くしたレイチェルを引取って、大事に育てたのは悪いことじゃない。だが、甘やかしすぎたんじゃないのか?レイチェルももう30だ。村の男はレイチェルの性格を知っているから誰も選ばん。いいのか?このままで。」
初めて知ったレイチェルの生い立ち。
「30にもなって謝罪も出来ないのなら、この村から出て行って欲しいと俺は思う。」
「そんなっ!!」
「可哀想って言うのか?なら、レイチェルが虐めたり嫌がらせした相手は、されて同然とてでも思っているのか?」
ゴッホさんは、もう何も言えなくなっていた。
「ついでに言っておくが、莉緖と提携したいところは幾らでもあるんだ。困らないのは莉緖の方だ。今一度、その事をきちんとレイチェルに説明しておいた方がいい。」
「・・・分かった。莉緖、本当にすまなかった。また出直すよ。」
トボトボと帰って行ったゴッホさん。
「シアンさん、ちょっと言い過ぎなんじゃ?庇ってくれたのは嬉しいですけど。」
「俺だって言いたくはなかったよ。でも、このままならレイチェルは村から爪弾きにされる。もう、そういうところまできているんだ。」
「私・・・どうすればいいですか?」
「莉緖は毅然としていればいい。下手に情けなんか掛ければ、共倒れにされるぞ。」
そんな事を言われても、20歳の小娘が毅然といられるほど強くないんです。
「シアンさん、もうその変で。莉緖には荷が重いです。」
「アオイ先生。」
「莉緖、そう泣きそうな顔するな。俺が付いている。」
私の頭毎抱き締めてくれては、背中を撫でてくれた。
「悪い、莉緖。莉緖は被害者なのに、嫌なこと言った。」
「後は俺が引き受けますんで、お引き取り下さい。」
「あ、あぁ・・・頼む。」
足音が遠ざかって行く。
「アオイ・・・私はどうすればいいのかなぁ?」
「ん?レイチェルさんが謝って来るなら、許せばいいだけだろ。それまでは現状維持でいいんじゃないか?」
「そうだよね?私はただ・・・。」
「現実を知って欲しかったんだろ?」
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