第57章 その後の俺たち
そんな時に、父親からゲームを貰って・・・そこで思い出した。躊躇なんてなく、俺は莉亜のパスワードを入力した。
あの世界が始まってすぐ、どういう訳か俺の元の記憶は消えていた。女神の力なのか、理由は分からないけれど。
それでも、あの世界は本当に眩しかった。辛いこともあったけれど、いつだって莉亜が俺を導いてくれた。毎日が楽しくなったし、体の関係も躊躇いなんてなかった。
自由で、俺を俺として求めてくれた。今思えば、元カノといた時は、体の関係なんて欲しくも無かった。何度か元カノから求められたけれど、洗脳されてから何の感情も湧かなくなっていた。
洗脳が溶けてから、彼女が欲しいなんて思わなくなっていた。
そんな俺が求めたのが莉亜。健人に話した時、健人は驚き止めた方がいいと言われた。それでも、俺から告白したことを伝えればひどく驚かれた。
そして、その話しと共に、ゲームのことを話した。健人は、俺を否定しなかった。俺が言うなら、嘘じゃないんだろうと言ってくれた。
健人にも女神のことは話してはいない。それでも、回りのヤツらには健人から上手く言ってくれて今に至る。
溺愛・執着・束縛・・・色んな言葉を言われたけれど、そこまで俺が好きなのならと、誰も反対されることはなかった。
あの女神は何処にいったのだろう?いつか、会える時があれば感謝しいていることを伝えたい。
真っ白なタキシードに身を包み、俺は真っ白なウエディングドレスを身に纏った莉亜と共に教会で永遠の愛を誓った。
フト、俺たちの周りにキラキラした光が注いだ。
まるで、ゲームの中で女神が現れる時にエフェクトとして見える光の粒子のようだ。莉亜にも見えているようで、驚いた顔をしていた。
(あぁ、そうか・・・あの女神が祝福してくれているのかも?)
「ありがとう・・・」
俺は小さく呟いた。その光の粒子は一際輝き、やがて消えてしまった。その時、聞こえた気がした。
【幸せになってね】
披露宴の間、俺は殆ど、隣りにいる莉亜を見ていた。回りから見過ぎだと言われたけれど、この目に焼き付けておきたくて仕方なかった。
ゲームの中では行えなかった結婚式だ。俺があまりにも見詰めることで、ハニかむ莉亜が可愛くて仕方なかった。