第56章 お正月
美味しいと言おうとした時、私の名を呼ぶ声が聞こえた。声の方を見れば、中学・高校と一緒だった友達二人だった。
「やっぱり、莉亜!!帰ってたんだ。久しぶり。」
「二年ぶり?全然、こっちに帰って来ないんだもん。」
「ごめん、ごめん。でも、元気そうだね。」
再会を喜んだのも束の間、二人は理人を見た。
「で、莉亜の彼氏?」
「彼氏ではないかな。初めまして、三浦 理人です。」
キラ~ンとした、笑みを浮かべ自己紹介する理人。二人はその王子様キャラに圧倒されていたけれど、疑問を口にした。
「彼氏ではないなら、友達ってこと?」
「違うよ。婚約者だよ。」
理人の言葉に、二人は盛大な声を上げた。
「こ、こ、こ、こ、婚約者って本当なの!?」
随分、こを連発したな。まぁ、驚くのも無理はないと思う。
「本当だよ。結婚は卒業してからだけど、俺が我儘言って莉亜にお願いしたんだ。」
二人は呆然としている。
「莉亜の友達なんだよね?」
「あ、向坂 梨美です。莉亜とは中学からの友達です。」
「内海 栞です。私も中学からの友達です。」
圧倒されたままの二人だったけれど、理人に見惚れつつも驚きの方が強かった様だ。
「式に招待するから、良かったら来てね。」
理人が話しを進めて行く。久しぶりだったのに、私はあまり会話が出来なかった。二人と分かれて、実家へと帰って行く。
「いい子たちだね。」
「えっ・・・理人の好みってこと?」
「何言ってんの?俺の好みは莉亜でしょ。」
ごめん・・・何か、理人がそんなこと言うから、思わず妬いてしまったよ。確かに、二人はいい子たちだ。高校では同じクラスにはなれなかったけれど、中学からの腐れ縁だ。
「ねぇ、莉亜。本当に莉亜の部屋で俺も泊っていいの?」
ウチの両親は何故か、同室に泊ることを否定しなかった。縁続きとなるであろう理人を、手離したくなかったのかな?
「理人が一人がいいなら、そうするけど?」
「そんなこと一言も言ってないよ。それに、もう何ヶ月も一緒にいるのに、傍にいないのは耐えられないんだけど?別室だと言うなら、寂しくなって襲いに行くかもしれないよ?それでもいいの?あ・・・それがいいの?」
「ち、違うからっ!!実家で、そういうのはダメだからね?みんないるんだから。」
一番知られたくないわ。家族には。