第56章 お正月
その度に、理人に保護されるのだけど・・・。
やがて、境内に到着して参拝した。心の中で、何度も繰り返す。
【理人に愛想をつかれませんように!!】
「熱心だったね。何をお願いしてたの?」
「い、言わない。恥ずかしいから。」
「へぇっ、恥ずかしくなるような事をお願いしたのか。何だろなぁ。俺の莉亜が恥ずかしくなるような事って。凄く興味あるよ。」
こんな人通りの中で、「俺の・・・」って言った。それを聞いていた女の子たちが、またしても黄色い声をあげる。
「お、おみくじひきに行こう。」
理人の手を引いては、おみくじを売っているところへ移動していく。ま、まぁ、何となく分かってた。
理人は文句なく大吉。私は、吉。微妙?
「はい、交換。」
「えっ?で、でも・・・。」
「俺の大吉は莉亜にあげる。俺は自分の手で未来を切り拓いていけるから。俺の大吉で幸せになった莉亜が傍にいるなら、無敵だと思わない?」
理人のイケメンぶりに泣きそうだよ。理人は高い場所におみくじを結んで、私の手を引いて歩き出した。
「俺、こういう出店って久しぶり。莉亜、何か欲しいものある?」
「欲しい物?う~ん、何だろう。理人は?」
「俺?そうだなぁ・・・。ちょっと見て回ろうか。」
咄嗟に思い浮かばなかった私たちは、出店を見て回った。そして、私の手には葡萄飴・蓮根チップ・リング焼き・・・。人通りから離れて、リング焼きに舌鼓み。
リング焼きを食べる理人も、カッコ良かった。私が見詰めてしまっていたからか、一口差し出してくれた。首を横に振ると、何かを思ったようでいきなりキスされた。
人通りから離れたとは言え、人がまったくいない訳ではない。
「り、理人、ここは外だし、人がいるからダメだよ。」
「ん?でも・・・俺を見詰めてるなら、リング焼きが食べたいって事じゃないなら、キスして欲しいのかって思うけど。」
当たり前じゃない?って、言葉が聞こえてきそうだが、取り敢えず、恥ずかしいからダメだと否定しておいた。
「初めて食べたけど、結構美味しいな。それに、この蓮根チップも好きかも。家で作れそう。はい、あ~ん。」
リング焼きを食べ終えた理人は、続いて蓮根チップに手を伸ばした。そして、私の口元に差し出される。ニコニコして私を見ている理人に、仕方なく口を開けた。
「美味しい?」