第56章 お正月
クリスマス後の、お正月時の帰省。理人と共に帰って見れば、両親と3歳年下の弟はおもいっきり浮かれていた。見慣れて来た私でも、理人の美しさに眩しさを覚える時があるのだ。
母親は女性だから、まだ分からなくはない。でも、父親も弟も頬を赤く染めているとはどうして?ジト目で見遣れば、何故か親指を立ててられた。
【よくやった!!】
と、声が聞こえて来そうだ。いいのか、父よ。そして、弟よ。あんたは、乙女か?そして、理人を見詰めすぎだ。
まぁ、変に揉めるとかなくて良かったとは思うけれど。
母は・・・お椀に澄まし汁を装いながら、「イケメン・・・凄くイケメン・・・」と、連呼していた。浮かれまくっている。
何処かレストランでと言っていた両親だけど、理人が普段の実家を見たいということでこんな風になった。料理は、一体何人で食べるの?と思う量だったけれど、そこはまぁいい。
母を手伝っている間、理人は弟の悟(さとる)から質問攻めにあっていた。ねぇ、本当に何なの?誕生日・血液型・家族構成・好きな食べ物・趣味・・・理人は嫌な顔一つせずに答えている。
私はというと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「あ、そうそう。理人くんのお父様からお電話いただいたの。」
「えっ?いつ?」
「昨日よ。新年のご挨拶と、息子をお願いしますって。理人くんのお父様は、理人くんに似ているの?」
まぁ、確かに・・・似ている。
「うん、まだ三回しか会ったことないけど、似てると思う。」
若い時は、さぞモテたに違いない。理人と同じように・・・。
「あ、それと、時間の都合がついた時に、顔合わせをと言われたわ。楽しみね。」
理人の両親も、乗り気で嬉しいのだけど・・・。私みたいな庶民で、本当に良かったのだろうか?
理人は実家への同伴里帰りを、楽しんでくれた。キラキラした王子様キャラ全開で、私の家族も虜にしたんだ。
食事の後、地元の神社に参拝に行くことにした。徒歩で10分くらいの距離だ。想像はしていた。うん・・・イケメンだし。そして、参道では理人に目を奪われる人たちの視線を幾つも感じていた。
あちこちから、黄色い声が聞こえる。背が高い事もあり、人だかりの中でも存在感が半端ない。そして、私はというと・・・そう存在感がなく人の波に浚われてしまいそうになる。