第6章 農業生活六日目 (R指定)
リヒトは首を横に振った。価格を聞いて、遠慮しているのだろう。
「これは、ちゃんと僕がお客として飲ませて貰うよ。」
律儀な人だ。ケビンに見習わせたい。
「莉亜は、このサイズで売ったりはしないの?」
ゲームでは、その選択肢は無かっただけ。でも、今なら別に問題ないと思う。容器なら、倉庫にゴロゴロしていたから。
「それは構いませんけど。」
「僕個人で飲みたいんだ。店の方は、ちゃんとしたサイズで購入させて貰う。それで、試飲してからどれを購入するか決めさせて貰いたい。」
どこまでも、真面目だ。でも、さっきもあんなに飲んでいたけど、ケロッとしてる。お酒に強いのかな?
並べられたボトルの中で私の目に止まったのは林檎。淡い琥珀色で透明度もある。迷わず栓を開けた私を見て、びっくりした顔をしたリヒト。
開けた瞬間、林檎の甘酸っぱい香りが漂ってきた。一人だったら、ラッパ飲みしていたと思うほどそそられる匂いだった。
「少し待ってて。」
すみません・・・後先考えず、開けてしまいました。直ぐにグラスを持ってきてくれた。でも、グラスは一個だけ。そのグラスに並々と注いでは、リヒトの手に握らせた。
私はラッパ飲み・・・と思ったら、ボトルとグラスを交換された。苦笑いしながら・・・。ちょっと、はしたなかったのかもしれない。でも、飲んでくれるなら問題ない。
グラスから薫る匂いを嗅いでから、一口含んだ。あ、これヤバい奴だ。危険信号が出てるのに、止まらなかった。大量に甘いカクテルを飲んだ後の様な状況だ。
「リヒトしゃん!!美味しいれすねっ。」
「莉亜・・・ひょっとして、酔っぱらってる?」
グラスの中は空っぽ。フラ~っとする私を、咄嗟に支えてくれたリヒト。もう、空気も美味しい気がする。リヒトはボトルのラベルを見て目を見開いた。
「莉亜、ちょっと休もうか。」
「リヒトしゃん、飲んれます?」
「あ、うん、ちゃんと飲んだよ。」
そう言って笑うリヒトに、理性を半分以上失くした私は抱き着いた。リヒトからも、甘いいい匂いがする。
「リヒトしゃんも甘くて美味しそぉ・・・。」
「り、莉亜っ!?」
「リヒトしゃん・・・好き~。」
その後のことは、よく覚えていない。気付いたら・・・リヒトの部屋にいた。リヒトと一緒に・・・。