第6章 農業生活六日目 (R指定)
結果的には、ボトルの中は綺麗サッパリ。二人で飲み干してしまったワイン。ケビンは酔っぱらっている。リヒトは、変わらず頭を抱え込んでいた。
「リヒトさん?」
「商売に・・・巻き込みたくなかったんだよ。これ以上。」
「えっ?」
キョトンとして、リヒトを見れば・・・リヒトは盛大な溜め息を吐いた。
「それなのに・・・決心が揺らぐ。僕は甘いワインって得意じゃない方だったんだけど、これは別枠だ。病みつきの意味が分かる。」
「そうだろう?特にこの白ワインは、一本5万円するからな。だから、俺は少し安い赤にしている。それでもすこぶる美味い。」
私は値段を聞いて、思わず声を上げそうになった。すっかり怖くなった私は、そっとボトルを片付ける。しかし、その手を掴まれた。
「莉亜・・・定価で買う。だから、どれくらいの量なら僕に卸して貰えるかな?」
「えっと・・・冷えてないのなら、いっぱい?種類は他にもあるし。」
そこで、ケビンが声を上げた。
「チェリー酒あるのか?」
食い気味のケビンにたじろぎながら頷く私。リヒトは、ケビンを凝視している。次の言葉を待っているだろう。
「あれは一回しか飲んだことが無い。ほら、村長の誕生祝の時だ。あれはダメだ。人をダメにする。あれから暫く、俺はチェリー酒が頭から離れなかった。」
どれだけ、サクランボが好きなんだろう。そう言えば、試飲って私は一滴も飲ませて貰えなかった気がする。そんなに美味しいの?
「チェリー酒って、幾ら?」
「1本10万だ。」
代わりにケビンが答えてくれた。って、10万もするの?価格設定って、ゲーム内のものだから私が決めたわけじゃない。
「チェリー酒だったら、そのボトルなら4万円くらいになるな。」
試飲用のボトルはペットボトルを一回り小さくしたくらいの量。
「莉亜・・・見せて貰ってもいい?取り敢えず、種類を見たい。」
ケビンも見たそうだったけれど、仕事があるということで帰って行った。物凄く、後ろ髪惹かれていたっけ。
リヒトに作業場にある、ワインセラーを案内した。こちらは直ぐ飲めるように、冷やしている方だ。試飲用なので、全種類収納出来ている。さっき話していたチェリー酒もある。
「これは・・・見た目にも綺麗だな。これがチェリー酒。」
リヒトはチェリー酒に釘付けだ。
「飲んでみますか?」