第55章 クリスマス
確実に外堀が埋まっていく。
「理人を幸せにしてくれてありがとう。」
「えっ?」
「あの時、俺の頑張りで今に至れたのなら、やって良かったって思えるから。理人の事、本人から聞いてるよね?まぁ、莉亜ちゃんに元カノの話しをするのはいい気分じゃないだろうけど。」
神尾はそれでも、ニコニコとしていた。理人は、他の友人と話している様だ。
「理人は、神尾くんにとても感謝してたよ。神尾くんだから、あの洗脳から抜け出せたって言ってたから。」
「元々、俺と違って感情の起伏がある方じゃなかったけど、それでも機嫌のいい時と悪い時の違いはあるって言うか。でも、あの時の理人は無だった。元カノとは、思いっきりバトルした。俺が知ってる理人を返せって。」
笑って話しているけれど、神尾が頑張ったから今の理人がいるんだ。二人だけの繋がりがあるのだと思う。
「彼女が出来たって聞いた時、また・・・って、正直言えば反対したんだ。でも、理人から告白したって聞いて驚いたよ。それと・・・ゲームの話しも聞いた。」
「えっ・・・そ、そうなの?その話しを聞いて、神尾くんは信じたの?」
「うん。理人が言った言葉だから。それに、あんな楽しそうな理人を見たのは初めてだったから。凄く・・・嬉しかったんだ。俺には奈緒がいるように、理人にもかけがえのない大事な人が出来ればいいなってずっと思ってたから。」
優しく笑う神尾に、私は泣きそうになった。何って、優しくて温かい人なんだろう。それに、あんな突拍子もない話しを信じたなんて。
「本当なら、男である理人に大事にして貰ってとか言うだろうけど、逆なこと言ってる俺の気持ち分かってくれたかな?それに・・・もう一つだけ教えるよ。」
神尾は人が悪い顔をした。
「洗脳されている間の理人、全然勃起しなくなってしまったんだ。どれだけ元カノが迫ってもね。理人って、本当に振り切ってると思わない?今は・・・ね?」
神尾の言いたいことが分かって、顔が赤くなる。
「絶対、どんなことがあっても理人を手離さないで。莉亜ちゃんを知った今、莉亜ちゃんがいなくなったら・・・きっと、次は俺じゃ立ち直らせることは出来ないと思うから。」
真剣な眼差しでお願いをする神尾に私は頷いた。