第55章 クリスマス
「と、兎に角、次を見に行こう。」
「えっ、アレ、莉亜に似合うと思うよ?」
似合うからって基準で買ってたら、切りがないと思うんだけど。私は庶民だ。それに・・・何でも、理人に買って貰うのは違うと思うから。
「いいから、次行こう。」
腑に落ちない顔をしている理人の手を引いて、街の中を歩いていく。そして、今度は理人が何か気になったらしい。
でも、それは品物では無かった。理人の視線の先にあったのは、あの時より少し痩せた元彼と・・・顔を隠しているけれど、元親友だと分かった。
「続いてんだな・・・。」
ボソッと呟いた後、私を腕の中に抱き寄せ髪にキスする。そして、見ていた事に向こうは気付かないまま何処かに行ってしまった。
「理人は、動画見たの?」
「見てないし、見たいとも思わない。俺が見たいのは、莉亜のだけだよ。想像しただけで、ムラムラする。」
「えっ?そ、想像?」
そして、理人に強く抱き締められた。
「り、理人?」
「少しだけでいいから、幸せ噛み締めさせて。」
「う、うん。」
頭の上から、小さく笑う声が聞こえた。
「みんなもクリスマスで浮かれているだろうから、俺もいいよね?少しくらい。莉亜、俺の体に抱き付いて欲しい。お願い。」
お願いされたので、理人の体に腕を回して抱き付いた。
以前なら、こんな幸せな気持ちになんてなることはなかった。私だって、幸せでいっぱいだ。
「・・・そろそろタイムリミットだな。行こうか。」
「えっ・・・。」
「何なら、行くの止める?莉亜を抱き締める事に忙しいから、やっぱり行けないって言ってもいいし。」
このセリフも既視感を感じる。でも、そんなことをさせちゃダメな気がする。
「帰ったら、また抱き締めてくれる?」
「勿論だよ。じゃあ、行こうか。」
手を繋ぎ、街中を歩き車に乗り込んだ。向かった先は、貸し部屋の一室。既に、皆は揃っていた。
「理人一人だったら、来てなかっただろうなぁ。やっぱり、莉亜ちゃんの影響は凄いや。いらっしゃい、お二人さん。」
テーブルの上には、色んな持ち込みの料理が並んでいた。ゲームをしたり、この前のコテージの話しで盛り上がった。
「正月はどうするんだ?」
「莉亜の実家に行く。ちゃんと、二人揃って行ってなかったから。健人は?」
「奈緒とボード旅行。」