第55章 クリスマス
「ありがとう。俺の幼馴染みをお願いします。何か困った事が起きたら、いつでも相談して?あ~、そろそろ時間切れか。」
「えっ?時間切れって?」
「莉亜ちゃんを独り占めしてたから、理人がチラチラこっち見てる。ちゃんと、一度でいいから話させてって言ったんだけどなぁ。許可も貰った筈なんだけど。うん、でも、今はその振り切れた執着でも嬉しいよ。あ~、本当のタイムリミットだ。」
いきなり、背後からハグされた。覚えのある腕と体温。
「あ~、俺が独り身じゃなくて良かった。理人に刺されるところだった。そんな不機嫌な顔するなよ。話しは終わったから。」
「・・・健人。」
「ん?」
理人は少し黙り込んで、そして意を決した様に神尾にこう言った。
「今までありがとう。もう、大丈夫だから。」
その言葉に、神尾は思わず目を見開いた。あ・・・段々と、目に涙が浮かんできた。
言葉には出来ないようで、何度も頷く神尾。
「もうっ・・・健人って、涙もろいんだから。でも、良かったね?三浦くんと健人はお互いに一人っ子同士だから、本当の家族みたいに育ってきたものね。それに、昔っから三浦くんのこと大好きだよね、健人って。まぁ、私の次にだけど。」
そう言って笑う小沼に、私たちも笑った。
「小沼さんもありがとう。健人を支えてくれて。」
「三浦くん、本当に良かったね。でも、束縛は程々にね?」
「あ~、うん、善処します。」
自信無さそうに言う理人に、また皆で笑った。
他の友人たちも優し気な目で見ていた。今日のこの時間、本当に暖かい気持ちにさせられた。
この日のことを、私は一生忘れないと思う。
解散となり、家に帰った。
この日は、お互いに抱き合って眠った。幸せを噛み締めながら・・・。