第55章 クリスマス
その時になって、理人が小さく声を上げた。
「どうかしたの?」
「クリスマスパーティー、皆でやるって聞いた気がする。」
電源を入れれば、皆からのメールが物凄い事になっていた。
「だ、大丈夫?」
「時間は夜の七時からだから。そう言えば、莉亜にも言うの忘れてた。莉亜との初めてのクリスマスだったし、どうしてもそっちばかり考えてた。えっと・・・持ち寄りか。」
「持ち寄りって、料理とか?」
理人は何やら考え込んでいる。
「・・・今年は断わったはずなんだけどなぁ。まぁ、仕方ないか。持ち寄りか。ねぇ、莉亜。俺、ナッツいっぱい入ったパウンドケーキがいい。作ることは可能?」
「それなら材料も大丈夫だけど。因みに、何本?」
そもそも、何人でやるの?
「う~ん・・・俺も食べたいから、3本は欲しいかも?」
「分かった。いいよ。」
理人も手伝ってくれて、3本のパウンドケーキを焼く。甘党ではない理人だけど、このケーキだけは好んで食べてくれる。
「莉亜、それは?」
「白身魚のフリッターだよ。チーズのディップに付けると美味しいでしょ?それに手軽に食べられるからいいかなって。」
「俺、好き。莉亜の作るフリッター。材料あったっけ?多めに欲しいんだけど。」
嬉々としてリクエストする理人の為に、多めのフリッターを作っては紙箱に収納した。一応、二人で参加だから二種類くらいは用意しておかないとね。
朝食兼ランチは、昨日の残りのビーフシチュー。頑張って二人で食べ切って、約束の時間まで出掛けることにした。
理人が返信して、皆がホッとしたらしい。理由は聞かれなかったけれど、きっとバレているんだろうと思う。
街で散策時に、理人は機嫌良さそうに色んなものを見ている私を見ていたらしい。人通りが多い中、ぶつかりそうになる私を手助けしてくれた。
「あ・・・可愛い。」
「ん?どれ?」
「黄色い石が付いてるピアスがあるでしょ?」
私の上から、覗き込むように陳列したピアスを見ている。
「あぁ、アレ。うん、分かった。」
「何処に行くの?」
「ん?アレが欲しいんだよね?」
慌ててその場から理人を引きずって離れる。
「可愛いって言っただけで、欲しいって言った訳じゃないから。それに、欲しければ自分で買うからね。」
「ん?何で?」
何でって、私が何でって聞きたい。