第55章 クリスマス
理人が手を引いて、階段脇の影に移動して私をハグした。
「他のカップルを羨ましそうに見てたよね?だから、いつになれば言って来るかなぁって待ってた。ごめん、意地悪だった。でも、言ってくれて嬉しい。俺の独りよがりじゃないって分かったから。」
「嫌じゃない?」
「本音を言えば、ずっとしたくて堪らなかったよ。あ~、本当に嬉しい。俺ばっかり、キスしたいって思ってるのかと思ったから。もう、こんな意地悪しないから。」
頭の上で、スリスリする理人。嬉しそうな様子が伺える。
「ねぇ、理人。」
「分かってるよ。焦らし過ぎたかな。可愛いなぁ。」
頬に触れる大きな手と共に、顔が近付いてくる。角度を変え、何度も口付けられた。
「好きだよ、莉亜。」
「私も好き。」
「ありがとう。」
暫く抱き合ったまま、お互いの温もりも感じていた。
「そろそろ次に行こう。」
「うん。」
初めての理人とのクリスマスは、とても素敵な一日だった。街並みを散策し、レストランで食事をしてから帰宅した。
勿論、理人に求められ肌を合わせ、幸せな時間を過ごした。
翌朝。
理人の腕の中で、理人の温もりに幸福感を感じていた。
たった数ヶ月前に始まった理人との毎日。あんな辛いことがあったのがどうでもいいと思えるほど、今が幸せで仕方ない。
まだ閉じられた理人の瞳。そっと頬に触れて見れば、薄っすらと目が開く。焦点が定まらず瞳が何かを探しているように見える。
でも、それも私を認識して、穏やかな笑顔を見せてくれた。ゲームの中で、リヒトが見せてくれたものを彷彿とさせる笑顔だ。
「おはよう、莉亜。」
「おはよう、理人。」
蜂蜜色の瞳がとても綺麗だ。身体を起こした理人が、私の上に覆い被さる。見つめ合ってから、触れるだけのキスを何度も繰り返す。
やがて、深いキスとなり、朝から理人に求められた。それも三度目の行為の途中で、理人のスマホが鳴った。でも、理人は出ようとしない。
それでも、暫く続く着信に少し不機嫌そうにスマホに手を掛けた。が、躊躇なく電源を落とした。そして、続きをしようとする。
「えっ?いいの?」
「いい。」
理人は短い返事をしては、少し狼狽える私に甘さと快楽を与え続けた。理人の気持ちが満たされた事で、終わった行為後シャワーを浴びた。