第54章 理人のお仕置き
美人の一言に尽きる。
そして、その美人の笑顔は、私に気付いて一瞬で消えた。無表情の美人は凄く怖い。
「莉亜、明日、会社に行く。莉亜も一緒に行かないか?」
「えっ?どうして?」
「父さんが、莉亜にも手伝って欲しいバイトがあるんだって。莉亜はやってたバイト辞めただろう?だから、どうかなって。」
確かに、私はバイトを辞めた。喫茶店でバイトをしていたのだけど、たまたまお客として理人たちが来てくれた時に、男性客から怖い思いをさせられたのが理由。
「そうすれば、ずっと莉亜と一緒にいられる。」
目を細め、私の髪を撫でる理人。あの・・・美人の女の子、放置でいいのかな?理人は、見向きもしないし。
「莉亜?俺は莉亜となるべく一緒にいたい。莉亜はそうじゃないの?」
乙女な理人が、甘えるように言って来る。
「キスしたら、受けてくれる?」
あ、ちょっと矛先が妖しくなってきた。それに、キスしたらって何?ここは学校だと言うこと忘れてない?いやいや、それより先に返答だ。
「ど、どんな内容?」
「それを明日聞きに行くんだ。たぶん、バグの検証じゃないかな。」
あれ?手が繋がれてる。恋人繋ぎだ。
「ね、ねぇ、三浦くん!!」
あ、強硬手段を講じて来た。こんな美人だから、無視されることなんてなかっただろう。流石に、名前を呼ばれたからか顔だけ向けた。
「何?」
どうして、そこまで不機嫌な声出せるんだ?って声色。普段の理人なら、余り見せない態度だと思う。
「ど、どうしてそんな冷たい言い方するの?その女に言わされてる?いつもなら、そんな言い方しないじゃない。」
「いつも?あんた・・・誰だっけ?」
存在は知っている。でも、理人にとってそれだけの認識だ。
「それに・・・俺の可愛い彼女、何で他人のあんたが貶すんだよ。あ、言い間違えた。俺が自ら外堀埋めて手に入れた大事な婚約者だった。」
ワザと?やっぱり、ワザとだよね?ご丁寧に、自ら外堀埋めたって言ったし。
「莉亜、そろそろ戻ろう。講義の時間だ。」
理人に手を引かれ、エレベーターに乗った。美人の女の子は、呆然自失中だ。扉が閉まると、顎を掴まれキスされた。エレベーターが目的の階まで到着するまで・・・。
「ん、機嫌直った。」
それは良かったですね。私は精神的にやられましたが・・・。