第54章 理人のお仕置き
えっ、何それ?理人の周り嗅ぎまわってたの?
「第一、男なら自分で行動しろよ。情けない、知り合いの女の子に頼むって何だよ。それで、そんな台詞吐かれても子供の我儘にしか聞こえないんだけど。」
「それに、お前と付き合ってどんなメリットあんの?理人の真似して理人のもの手に入れても、理人にはなれないぞ?」
この人、理人になりたかったの?
「この前、理人が利用するブランド店で同じもの買い求めようとして断られたんだろ?あれは、理人だけのオートクチュールだもんな。」
えっ?何のことだろう?
「それに、お前が理人に成り代わろうなんてどう足掻いても無理だろう。あの理人だぞ?」
二人の言葉は辛辣だ。
「煩い!!三浦の腰巾着のくせに。」
「お前は、その腰巾着にすらなれなかったもんな?」
厳しいセリフだ。
「遅いぞ、理人。」
「仕方ないだろ、先生の頼まれごとやってたんだから。莉亜、おいで。」
両手を差し出された私は、理人へと駆け寄った。
「大丈夫?何もされてない?」
「うん。」
「でも、結構酷いこと言われてたよね?」
神尾の言葉に、理人が私を散々貶した男子学生に目を向けた。
「お前・・・誰だ?」
神尾と宮田はまたしても吹き出したけれど、男子学生は凄く驚いた顔をしていた。存在の認識くらいは、されていると思っていたのだろうか?
「あ、そうそう。事の経緯の証拠はあるから、正しく提出しておく?」
「な、何だよ、証拠って。」
「ん?お前が莉亜ちゃんを罵っていた動画の一部始終?」
えっ、最初から聞いていたの?
「理人、そいつ凄い提案してた。莉亜ちゃんを取り上げて、一週間で捨てるって。」
「・・・そうか。それ、正しく使ってくれ。それと、一つ言っておいてやる。俺と莉亜、婚約しているから。仲を裂くなら、それ相応の罰は受けて貰う。社会的にも。」
「婚約っ!?学生なのに?」
驚くのも無理はないと思う。当の本人の私でさえ驚いた案件だ。
「もう一つだけ・・・莉亜の価値は俺以外知らなくていい。だから、意識の片隅にですら莉亜を止め置くな。忘れろ。」
理人がその人に近付き、見下ろした。
「いいな?」
その場に崩れ落ちた。大声で怒鳴りつけるでもないのに、余程怖かったのだろう。
そして、動画は・・・速攻、提出されていた。呼び出されたのは言うまでもない。
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