第53章 学祭と言う名の戦場
真面目だ。そして、珈琲も理解できる。
「莉亜は?あ、シフォンケーキなんてどう?へぇっ、ご当地の装飾品とかもやってるのか。見に行く?」
私の好みは把握されている。つまり、返事はYESだ。
先ず最初に行ったのは、装飾品。レジンで作られたキーホルダーやブローチなど。その中にあった、真っ赤なトマトのキーホルダーが目に止まった。
思わず、ゲームの中で育ったあの大きなサイズのトマトを彷彿させる代物。色どりも可愛らしい。
「それ、気に入った?」
「うん。ゲームを思い出しちゃった。」
「確かに、似てる。俺も買おうかな。」
理人がトマトのキーホルダー・・・。いいのだろうか?あ、買ってる。うん、いいんだな。なら、私も気にしない。
「はい、莉亜。」
「ありがとう、理人。」
お互いに直ぐに鞄に付けた。可愛い。店を出て、私たちがやっていた店があったところに差し掛かった。何か、立ち止まっている人がチラホラ。
その誰からも、カレーの言葉が聞こえる。何か、問題でもあったのだろうか?不安気に見ていると、理人に耳打ちされる。
「三日目の営業をしないってこと、知らなかった人たちだ。リピーターになってたかもしれないな。」
確か、運動部からの依頼はクラスメイトが主体となってくれていたらしい。で、あの後、また来てくれたそうだ。
「店子やってなくて良かった。絶対、何か言われた気がする。」
「そ、そうだね。」
「行くぞ。」
手を引かれ、向かった先は展示場。そう広くはない教室内。来客もまばら。故に、お互いに興味あるものをそれぞれ見ていた。
幾つかの展示物を見てから、フト理人の姿を探す。壁に寄りかかり、一冊の何かに目を走らせていた。目の保養。でも、後少しで終わりそうだから、そっとしておこう。
さて、次は何があるかな。
暫くすると、この展示場に不釣り合いな黄色い声が聞こえて来た。係員から注意されるほどの二オクターブくらい高い声だ。そして、何となく想像出来る。
あの理人の立ち姿は綺麗だ。だから、気持ちは分かる。最後まで読めたのだろうか?黄色い声は、まだ聞こえる。そして、心なしか近付いて来ている気がする。
そう思った時、私の背後から腕が腰に回された。誰かなんて見なくても分かる。
「何見てんの?」
「担任の先生のだよ。」