第53章 学祭と言う名の戦場
「あ、でも・・・二日間カレーの匂いの中にいたのに、もういいとか思わない?どうしよう・・・残ったら。」
「心配ないと思うよ。それに、このスパイシーな香りがたまらないんだけど。」
それならいいんだけど・・・。残ったら、持ち帰りかな?
16時10分前。完売のお知らせが来た。早めのお断りをしたから、騒動にはならなかったらしい。打ち上げのカレーを店に持って行くと、みんな疲れた様子。
お客さんがチラホラ、残念そうな顔をして店の前を横切っていく。
人数分のカレーを入れて、みんなで食べた。
「三日目もやってたら、大変だっただろうなぁ。みんな、店のカレー全然食べられなかったよな。あ~、この大振りのチキン美味い。」
「疲れた体に染みる。スパイシーで美味い。って、先生?」
振り返ると、担任の先生がニコニコして立っていた。
「長者の列だと聞いたのだけど・・・。」
「店の分は完売しました。」
そう言うと、皆の手元を見ている先生。
「あ、これは賄いなので、採算度返しのカレーです。良ければどうですか?」
「ありがとう。頂こうかな。」
皆で立ち食いだったけれど、みんなで食べたから美味しかった。先生は・・・食いつきが良かった。驚くほどに。
「あ~・・・もっと早くに来ておけば良かった。」
残念そうな言葉を吐いた先生に、皆で笑った。
「持ち帰られますか?後、二杯分しかないんで。」
「ありがとう。喜んで頂くよ。」
代わりに少し多めのお支払いをしてくれ、ニコニコして帰って行った。こういう時に、誰からも不満が出ないところがいいなと思う。
綺麗さっぱり無くなった鍋を洗い、片付けも終わった。みんな本当にクタクタだった。でも、満足そうでもあった。
そして、私たちは知らない。三日目も店をやるものだと思った人たちが訪れて、店の跡形もなかった広場を見て絶望していたことを。
帰宅して、私も理人もカレーの匂いが染みついていた。カレーの匂いが染みついた女子大生って・・・。
家で汗を流して、ベッドに寝転んだ。
「お疲れ。でも、あれだけ作ったのに、最後の賄いしか食べられないって思っても無かったな。」
「そうだね。ほんと、まさかだった。」
「明日は見て回るだろう?」
カレーしか作ってない。最終日くらいは、学祭を楽しみたい。
「理人は予定とかいいの?」