第53章 学祭と言う名の戦場
二日目は、朝から既に長者の列が出来ていたらしい。口コミ効果もあったようだ。そして、同じ調理室で作業をしている人たちも、友人にカレーを買って来て貰えるように依頼しているのを小耳に挟んだ。
昼間に空いた鍋を持ってきたメンバーから、店が戦場の様だと聞かされた。そうか、戦場。
「莉亜、それ何してんの?」
「お結び。具はチキン。ゆっくりお昼取れないと思うから、作ったら渡して来て貰える?」
「分かった。」
人数分のお結びと一つの鍋を持って、理人は店へと行った。少しして、空っぽの鍋を持って戻ってきた。
「ありがとう。お店の方はどうだった?」
「うん、正しく戦場だった。それに、お結びを見た客から、新メニューなのかって聞かれた。」
お結びは時間が掛かるから無理だ。
「何って答えたの?」
「ん?賄いだって言っておいた。物凄く欲しそうな顔はされたけどスルー。で、運動部から20杯の依頼が入ったって。14時に取りに来るらしいよ。」
20杯・・・そっか。運動部なら食べそうだよね。
「今日も早めの閉店になりそうだって、健人が言ってた。合い挽き肉もないから、もう作れないし。」
「じゃあ、残った材料全部入れたカレー作ってもいいかな?」
鶏肉が通常より大きめサイズの、煮込みカレーを残りの材料を使い切るつもりで調理した。
14時を過ぎた頃、神尾が空っぽになった鍋を二つ持ってきた。
「お疲れ~。もう、長者の列は打ち止めにしたから。」
「打ち止めって、今でも長者なんだよな?」
「うん、そう。で、小西さんの気分が駄々下がり。残ったら持ち帰るつもりだったみたいだよ。絶対に無理だよな。」
あっけらかんと言い放つ。
「ん?その鍋は何?」
「材料が中途半端に残ったから、残り全部でのカレーにしたの。チキンは大振り。」
「え、何その魅力的な案件。因みに、何人分くらい出来そう?メンバー分くらいはあるかな?」
嬉々として、鍋を覗き込む。
「残り全部だからか、スパイシーな匂いが強いよね。ご飯はたくさん炊いていて良かった~。あ、お結びみんな喜んでた。ありがとう。」
予定より早い時間で閉店だと言って、店へと戻って行った。
「これなら人数分は最低あるかな。これはこれで、別の意味で戦場になりそう。」