第53章 学祭と言う名の戦場
早くも学祭当日。昨晩から準備したカレーは二種類。付け合わせはザワークラフト。キャベツの酢漬けだ。
私と理人は、調理室の一角で只管料理三昧。理人が売り子をやれば、大変効果的だと思うけれど危険も伴うので調理になった。
「お~い、一鍋完売したぞ~。」
私たちは時計を見た。
「えっ、もう?」
「小西さんの売り子パワーが凄い。健人も売り子頑張ってるし。」
神尾くんは人懐っこい。鍋を受け取り、新しい鍋を渡す。
「じゃあ、誠よろしく。」
「行って来る。」
空になった鍋を洗い、新しくカレーを作る。まぁ、順調で良かった。でも、昼食時間はこれからが本番。そして、私の隣りにいる理人を他の店子の女の子たちがチラチラと見ている。
想像はしていたけど・・・。でも、だからか・・・。理人にベッタリされているのは。たまに、頭や頬にキスされてる。今現在、羨望&嫉妬の眼差しを向けられている私。
居たたまれない。
「莉亜、炒め具合どう?」
「うん、もう少しかな。」
少しして漂う香りが変わる。そこで、野菜を投入。因みに、今、カレーが入っている鍋は4つ。そう4つもあったのに・・・一時間後には半分。
メンバーも交代で食事=カレーを食べているだろうけれど、それでも減り方が早い。初日は予定より一時間早くに閉店。カレーは残らなかった。
店子をしていたメンバーで、明日用の野菜の準備をして貰った。私たちは頑張った。もう、野菜のみじん切りをしたくない。と言っても、明日には減った分は遣らなければならないのだけど。
片付けも終わり、まだやっている店を見ながら帰宅。少しして、理人にメールが届く音。画面を開き、目を通す理人。
「莉亜。」
「ん?」
「リピーター来るみたい。」
はっ?リピーター?
「涼からだったんだけど、店前で予定より早い閉店を残念がっていた客から話し掛けられたって。で、予約が10杯。」
予約なんてシステムあったの?そうなの?あ、またメールだ。
「あ、増えた。最終日は出店しないって言ったら、倍になった。健人に材料追加のこと連絡しておこうか。」
何、予約で20杯って。
「今日は早めに寝ようね。明日、もっと大変そう。」
「えっ?まだ、明るいけど・・・シテいいの?」
「ち、違うから。そう言う意味じゃないから。」