第52章 小旅行 後半
理人が淹.れてくれた珈琲を持って部屋に戻る。ソファーで休息。喉が渇いていたのか、冷たい珈琲の半分ほどを一気飲み。一息付くと、理人の腕が回され引き寄せられる。
「理人?」
「ん?」
「やっぱり、キスくらいはしたい。ダメ?」
強請ってみると、理人の肩が揺れた。あれ?笑ってる?理人の顔を覗き込むと、細められた瞳と視線が合わさった。
「あぁ、笑ってごめん。でも、莉亜のそういうのって、俺に影響された結果だよね。」
確かに・・・。以前の私なら、絶対言わなかったと言うか言えなかったと思う。
「こういうのって、結構嬉しい。で、返事は勿論YES。」
マグカップを机に置かれると、珈琲味のキスを堪能。えっと・・・堪能?まだ、堪能中?そして、理人の手の動きが怪しい。
結局は逃がしてくれなくて、理人の口や指で愛撫された。
「最後は、そうやって俺を甘やしてくれるんだよな。いっそ、このままなし崩しに・・・。」
だから、心の声が駄々洩れだって。流された私も悪いんだけど。
「そ、そろそろ夕飯の準備の時間じゃない?」
「別に一時間くらい後になっても問題ないよ。」
一時間は問題あると思うよ?何?一時間って。ひょっとして、ここで頷いたら組み敷くつもり?
「冗談。でも、後一分だけ。」
熱が籠ったキスをされ、精神を削られた気がする。水場に行くと、野菜のみじん切り大会が開催されていた。親の仇のように、野菜が切り刻まれていく、私はその光景に呆然。
凄くやる気が漲っている。カレーに対する思い入れが何とも言えない。そして、寸胴鍋は予想より深いもの。それが二つ。
でも、先ずは煮込みの方から。水を沸騰してくれていたので、簡単に煮込むことが出来た。鶏肉がホロホロになっていく。
さて、キーマカレーに着手。香辛料を配合しては、炒めて行く。そして、大量の野菜が投入。学校で給食を作っている気分だ。
心なしか、匂いに釣られて浮足だっている様に見える数人の人たち。主に、小柄で可愛い小西さん。
「この量、残ったりしないのかなぁ。」
メインはカレーだからいいの?後はサラダのみ。そして、カレーの匂いが風に乗って周辺へまき散らしていく。
故に、ハイテンションになっていく数人は可笑しいことになっていた。カレーの創作歌詞で歌っている。