第52章 小旅行 後半
後は只管、煮込むのみ。殺人的な匂いに包まれ、皆の口はカレーになっていたと思う。さて、味見。これは大事なミッション。
キーマカレーは前回と同じ味。そして、チキンカレーだ。歯茎だけですり潰せそうな具合で、こちらは少し穏やかな味にしておいた。
出来上がりを告げると、歓喜の声が上がる。お皿の真ん中にご飯を乗せて、その両サイドにそれぞれのカレーを入れた。
あれ?私って、食べるの遅かったっけ?みんなお替りしてる。私はチキン煮込みの方をもう少し食べたい。そう思っていると、別の器に入れられたチキン煮込みカレーを目の前に置かれた。
「理人?」
「先に死守しておいた。だから、慌てないで食べていいよ。」
「ありがとう。」
やっと一杯目を食べ終えた頃、どこからか視線を感じる。でも、見ちゃダメだと感じた。
理人が死守してくれたカレーは思ったより多めだったから、理人が少し食べているのは許容範囲だ。
私が食べ終わったことで、その器と入れ替えてくれた。
「ねぇ、莉亜。次はこのチキン煮込みカレーのピリ辛が食べたいんだけど作ってくれる?」
「うん、いいよ。」
どこからか、ジトーとした視線を感じる。でも、敢えてその視線は無視だ。
「帰ったら、香辛料買い揃えよう。」
「うん。そうだね。」
チラッと理人を見ると、食べている私を見ている。ひと匙差し出すと、躊躇なく口に入れた。
「量が足りなかった?」
「そんなことはないけど。」
更に、もう一口。理人は拒まない。ちょっと可愛らしい。そして、こちらを標的にしている視線が厳しい。
「綺麗さっぱり完売したな。って、理人餌付けされてる。」
「健人だって、しっかり食べてただろう?」
「まぁね。で、提案なんだけど。」
提案?何だろう?
「今年の学祭、カレーやらない?」
盛り上がるメンバーたち。呆然とする私と理人。
「絶対、売れる。クラスで何種類かやってもいいんだから、俺たちでやろう?」
みんな気が早い。でも、来月には準備が始まる。三日間の学祭イベント。去年は何もしなかったから、参加はしてみたい。
学祭の打ち合わせも行われ、最終日の夜は盛り上がって終わった。材料の手配などは、神尾くんたちがやってくれるらしい。
楽しかった遊びもこれで終わりだ。