第52章 小旅行 後半
「莉亜は俺に甘いな。」
「そうかな?理人はモテるからたまにヤキモチ妬いてしまうけど、それが馬鹿らしいって思えるほど執着してくれるから結構嬉しいよ?」
「そんなこと言って俺を甘やかしたら、大変なことになるかもしれないよ。」
そうは言うけど、結局は無理強いなんてしないよね?
「お手柔らかにね。」
「あ、さり気なく牽制されてる気分。なんて冗談。でも・・・。」
理人がじっと私を見る。
「性欲が収まらない。」
はっ!?こんな場所で何ってこと言うんだ。それに、ここに来ている他の観光客の女性陣!!貴女たちの隣りにいる恋人そっちのけで、理人に熱い視線を向けないで欲しい。
相手の人たちが可哀想だよ。
「明日帰ったら、俺の全部受け止めてくれな?多分・・・拒否されたら、余計にのめり込みそうになると思う。」
「そ、そういうことは外で言わないで。」
「善処はしたいけど・・・。」
理人・・・本音が駄々洩れだよ。
「今晩、少し食べていい?」
その提案は、しっかり拒否しておいた。ベンチで持って来たサンドイッチを食べ、コテージに戻ることにした。
川辺に沿って下流へと下りて行く。
ん?何か、遠くから騒がしい声が聞こえる。コテージの傍に戻ると、残っていた男性陣が、誰かを囲んで威圧していた。隙間から見えたのは、昨日の覗き込んでいた男性の片割れ。
もう一人は?と思っていると・・・小西の足元にうずくまっていた。えっ?これ、どういう状況?
「あ、お帰り。理人、莉亜ちゃん。」
「あぁ、これってどういう状況?」
「小西さんの足元にいるのが、小西さんに返り討ちされたヤツ。こっちは、両手に花を企んだヤツ。」
そうか、これが言っていた修羅場。
「空手の有段者の小西さんに挑むなんて、チャレンジャーだよね。」
よくよく見れば、両頬が真っ赤に晴れていた。これは、往復ビンタ?そして、円陣の真ん中にいる人は、子犬の様にプルプル震えてる。
で、女性陣は・・・普通に楽しんでいる。慣れているのか、気にした素振りすらない。
「そっか。じゃあ、俺らは部屋にいるから。続きを楽しんで。」
えっ?いいの?
理人も気にすることなく、コテージの中へと私を引っ張っていく。
「ね、ねぇ、大丈夫なの?」
「何も問題ない。」
キッパリと言われた。
「それより、珈琲飲みたい。莉亜もどう?」
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