第52章 小旅行 後半
理人には中学と高校で一回ずつ彼女がいたらしい。どちらも告白されて付き合ったのが切っ掛け.
「雁字搦めに束縛された。女の子と話すな関わるなはいつものことで、健人ら男友達とも仲違いさせられかけた。それに、小沼さんにもヤッカミしてたし。気付いたら身動き取れなくなっていて、健人には随分心配かけた。」
あ・・・理人の束縛の基準はそこか。雁字搦めって。
「人って、段々と可笑しいことも可笑しいって思わなくなるんだよな。洗脳って言うか。それでも、健人が居てくれたから今の俺がいる。」
「幼馴染みだもんね。」
「うん。健人じゃなかったら、今でも縛られてたかもしれない。物理的にも。最初は付き合えるだけでいい、そう言っていたのにな。」
はい?物理的に?
「い、今は大丈夫?」
「暫くは執着されたけど、ちゃんと俺の言葉で突き放さないと認めないって言われて拒否し続けた。そうしてたらさ・・・いつの間にか、他に男作ってた。意図も簡単にな。だったら、俺じゃなくてもいいじゃんって。」
「二人共、そんな感じだったの?」
理人は小さく頷いた。そっか、完全に束縛して自分だけ見て欲しくなるのか。理人との温度差が顕著だったのかな。
「別れた後、妙にサッパリしてた。未練なんてこれっぽっちもなかったし、情なんてものも残らなかった。」
そこまでされたらね・・・。
「莉亜は、俺を束縛したいって思わないの?」
「えっ、束縛?今でも十分していると思うけど。」
「今でも十分?それ、本気?」
そんな意外そうに言わないで欲しい。理人も大概だし、それを拒否しない時点で私も理人を束縛しているのと同じだと思うもの。
「うん、本気。」
「そう。俺は・・・どうにも出来そうにない。しようとも思えないって事自体、ヤバいなって分かってるんだけど。」
「大丈夫。私は嫌なことはちゃんと嫌だって言うし、嫌がる私を無理矢理言い聞かせようなんてこと理人はしないもの。それに、私だって理人とイチャイチャしたい。」
理人は優しい。それだけは分かってる。
「正直言って、あの時は分からなかったけれど、今なら少し理解出来る。恋人には自分だけ見てて欲しいって気持ち。遣り過ぎないように努力するけど、苦しくなったら言って。」
「物理的に苦しくなければ問題ないよ。」
力技でやられたら、どうしようもない。
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