第52章 小旅行 後半
三日目の朝。
目を覚ますと、目の前に理人の顔。
「おはよう、莉亜。」
「おはよう。起きてたの?」
「少し前にね。」
だからと言って、寝ている私を凝視しないで欲しい。
「理人・・・見過ぎ。恥ずかしいよ。」
「どうして?全然、恥ずかしくなんてないよ。莉亜はどんな時も可愛いんだから。」
いやいや、私は一般人だ。そんな言葉で浮かれる程、自身に自信なんてない。
「理人だって、見詰められるのは嫌じゃない?あ、見詰められ慣れてる?」
「ん?莉亜、慣れるほど俺を見詰めてないよね。」
何か、話しが違う。私が言っているのは、他の女の子からの視線。
「莉亜なら、歓迎する。」
嫌がられるよりはいいのかな。あ~、今日も理人は美しい。
後頭部に触れた手に引き寄せられ、唇が重なった。暫しの、甘い時間。でも、途中で危険を感じてやんわりと理人を押し返す。
少し残念そうな顔をされたけれど、理人だって今のこの状況を理解している。きっと、他の恋人同士も同じ気持ち・・・だよね?
「今日は、何かする予定あるの?」
「あぁ、この近くに滝があるんだ。見に行かない?」
「行きたい。」
理人が作ってくれた朝食を食べ、私たちは早々に滝に向かって出掛けることにした。ここから離れる時は、誰かに居場所を告げることになっているし、黒板があってそこに行き先を記載することになっていた。
まるで、ゲームの中でもやった出来事だ。少し複雑な気分。
理人と共に向かった先は、徒歩で30分ほど場所。他の観光客もチラホラ来ているところから、有名な場所なんだろう。
「水しぶきが気持ちいいね。」
全身でマイナイオンを浴びている。
「去年も、ここに来てたの?」
「他のみんなは来てたみたいだけど、俺は初めて。独り者の俺が参加すれば、皆に気を遣わせるから。」
それは確かに・・・。この状況で、独り者が参加するには勇気がいるだろう。
「それでも、律儀に誘ってくれてたんだけどな。なぁ、莉亜。」
「うん?」
「恋人同士っていいものだな。初めて思った。」
ん?こんな美形だから、過去に彼女の一人や二人いたはず。どんな付き合い方だったんだろう?
「初めてってどうしてそう思ったか、聞いてもいい?無理にとは言わないけど。」
「莉亜にならいいよ。まぁ、聞いてもいい話しじゃないだろうけど。」