第51章 小旅行 前半
振り返れば、コテージ前のあるベンチに座って神尾くんと話していた。仲がいいなぁなんて、微笑ましく思いながら只管鍋を掻き混ぜる。
「莉亜ちゃん・・・破壊的な匂いがする。」
「えっ?破壊的?」
「私もカレー好きなんだよね。いい匂い過ぎて、涎出そう。」
こんな可愛い女の子が涎出そうって言った。吃驚して顔を見詰めれば、いい笑顔を向けられた。
「それに、このスパイシーさがたまらない。二人の次でいいから、私も食べたい!!」
厚い胸の内を伝えられた。
「口に合うといいのだけど・・・。」
「絶対美味しい。匂いも美味しいから間違いない。」
「ありがとう。」
目をキラキラさせた可愛い女の子が、カレーが好きなことをプレゼンしてる。内容がケーキや可愛いものではないけれど、それでも可愛く思えてしまう。
さて、そろそろ味見。小皿に入れては、スプーンで口に入れる。あれ?何かヤバい。自画自賛なことは分かってる。でも、美味しい。もう一口とスプーンを口に入れようとしたけれど、それは叶わなかった。
「理人っ!?」
「んんっ!!ハァッ・・・。」
理人の口から悩まし気な吐息が零れた。無駄に色っぽい。
「ど、どうかな?」
「俺・・・お替りする。絶対する。」
いやいや、まだ味見しかしてないけど、もうお替りのリクエストするの?気に入ってくれたことは嬉しいけど。
「俺好みの辛さ。」
声が掛けられ、みんなで夕食タイム。勿論、BBQも食べつつ、他の料理も舌鼓。理人はカレーをお替りしていた。
少しして声が上がる。
「あぁっ!?俺、まだカレー食べてないのにもうないじゃんっ。」
たくさん食べたのは理人・・・だけではなく、コンスタントにテーブルの上に各々の食べたであろう器の後がある。そして、あの可愛い女の子は小さくなって食べていた。山盛りのカレーを・・・。
「あれ三杯目なの知ってた?」
「えっ?ホント?三杯目であの山盛りなの?」
あんな華奢な女の子なのに、何って食欲。そんなことを思っていると、理人がまだカレーを食べていない友人に自分の器を渡していた。優しい・・・。
友達は喜んで直ぐに口に入れていた。現金な人だ。そして、理人は私のカレーが入った器をじっと見ている。目は口程に物を言うと言うことを、分かりやすくやっている。