第51章 小旅行 前半
下準備は女性陣だったはず。確かに、火を起こすのは理人がやってくれた。その後は、優雅にハンモックで睡眠中。
ダッチオーブンが圧巻に並べられ、火を通す為に食材が入れられていく。分担ということで、私はキーマカレー。何故か、リクエストされた。よくよく聞けば、理人が食べ違っていたらしい。
ゲームの中で振舞ったことを思い出す。あれがあったから、食べたかったのかな?予想以上の豊富な香辛料があったので、これも理人の思惑が入ったものなのだと理解した。
香辛料を大鍋で炒めると、刺激的でそそられる匂いが辺りに充満する。全ての食材をみじん切りにしたものを投入し、火を通してから煮込む。
理人好みであろう少しピリ辛味に整えては、焦げ付かないように鍋の中身を掻き回す。そうこうしていると、背後から腕を回された。
「前より複雑な匂いがするけど、香辛料のレパートリー増やした?すっごくそそられる匂い。勿論、莉亜もいい匂いするけど。」
「理人、突然は危ないよ?」
「ごめん。」
謝罪の言葉はあったけど、何かに心を奪われている様に感じた。真上を見上げれば、理人は何処かを見ていた。視線の先にいたのは、チラチラとこっちを覗き込んでいる部外者。
近くのコテージに来ているであろう、同世代の男性二人組。ここにある道具も設備も豪華だし、いい匂いも漂うから気になっているのかもしれない。
「理人?」
「用心だけはしておいて?」
「うん。」
返事はしたものの、男性陣だって数人は近くにいる。それは、部外者除けが目的なのかどうかは分からないけれど。理人だって、友達と一緒に来たんだから、友達とも関わったりするだろう。
折角だから、私も女性陣ともっと仲良くなりたい。
「三浦くん・・・莉亜ちゃんの邪魔。みんな個人行動しないようにするから、大丈夫だよ。」
「・・・・・・分かった。そこのベンチで見てる。」
少し間はあったものの、離れて行った。
「過保護だなぁ。でも、そこで覗いてた人たちみたいなの、結構いるから気を付けて?冗談抜きで、以前に何回かトラブルあったから。」
確かに、私以外は美男美女の集まりだ。さっきは男性たちだったけれど、女性だって肉食の人もいるから関わって来ようとする人たちもいるかもしれない。
モテるって大変だ。