第49章 後期の学校の始まり
「来週末、実家に行くから空けておいて。」
「理人の両親はいい人たちだから、何も心配いらないよ。」
そう言ったのは、理人と腐れ縁の神尾くん。理人と同じくらい長身で、明るくていい人だ。彼女もザ・女の子で可愛くて優しい人。
「ありがとう。」
そう言ってくれたけど、緊張するものはする。でも、そういうものだと思うことにした。やがて、先生が来て授業が始まった。
静かな講義の中、痛いくらいの視線を向けて来るのは且つての親友。が、それも途中で消え失せたのだけど。私と頭一個分くらい高い理人が、且つての親友を冷やかな目で見ていたことに気付かなかった。
まぁ、肝心の本人は青い顔をして、そっぽを向いたらしいけれど。で、講義中なのにたまに指を絡められる。驚いて顔を向ければ、真剣な眼差しで講義を聞いている様に見える理人。
そう、様に見える・・・。だって、私の視線に気づいた理人が私を見て、ニッコリと笑うから。そして、絡められた指先がキュッと握り締められる。
回りからも小さな声だけど、微笑まし気な言葉が聞こえる。全くもって、居たたまれない。でも、しっかり講義を受けなきゃ。このメンバーたちは、高成績だったはずだから、私も頑張らないといけない。
集中していたら、いつの間にか指先は自由になっていた。全く、油断も隙も無い。って、ゲームの中でもそんな事を思った事があったっけ?
「莉亜?」
「うん?」
隣りを見れば、既に片付けて鞄を肩に提げては立ち上がっている理人。回りも然り。
「みんな早いね。」
「慌てなくていいよ。」
そう言われても、皆が私待ちに見えるから慌てざるを得ない。何とか鞄に突っ込んで立ち上がった。
ねぇ・・・これって何?どうして、私たちは理人の友人たちの輪の中に囲まれて移動してんの?丸で護衛かのように感じるんだけど。
そんな事を思っていると、繋がれた指先に力が込められる。驚いて理人を見上げれば、正面を向いたまま通常運転?ん?繋がれた手・・・。いつの間に?
手に目を向ければ、隣りから小さく笑う声。あまりにも自然過ぎてか、ゲームの中では当たり前だったから違和感なかった。これは、ちょっと恥ずかしいと言うか慣れって怖い。