第48章 現実ともう一度の初めて
何処となく機嫌が良さそうに見える。
「ねぇ、理人。あの人、声掛けて直ぐに股を開く人が好みなの?」
何気に聞いてみれば、周りで聞こえていたらしい従業員の人たちが吹き出した。
「あ、ごめん。変なこと言ったね。」
「俺は男だからいいけど、莉亜はそういうこと言わない方がいい。莉亜が汚れる。分かった?」
「うん。」
頷くと、理人は目を細めた。
「素直で可愛い。さ、早く食べて行こう。」
邪魔者が入らない内にと続きそうなセリフ。再び走りだした車。街を抜けて、自然のある道を進んでいく。
避暑地として有名な観光地だ。初めてと言うことで、私はキョロキョロと辺りを見ていた。
「初めて?」
「うん。」
「そう。観光してから、別荘に泊るから。」
うん?別荘?今、別荘って言った?
「別荘って、理人のおウチの?」
「そう。宿取ろうか考えてたら、使っていいって言ってくれたから。」
そうですか・・・。ここまで来て、今更だよね?
「き、綺麗に使います。」
「フフ、そんなの気にしなくていいよ。」
車を停めて観光地の町中へと入っていく。
「あぁ、そうだ。夕飯どうする?もし、作るなら別荘ででも可能だけど。管理人が適当に食材を入れてくれてるみたいだし。」
「そうなの?じゃあ・・・作る方でいいかな?。」
「構わないよ。じゃあ、手貸して。」
差し出せば、ゲームと同じく恋人繋ぎ。観光地と言うだけあって、ゆったりとした空間で、ご当地ならではの専門店が並んでいた。
「うわぁっ、これって蜂蜜?中身も綺麗だし、瓶のデザインも可愛いね。花の種類によって色が違うし、味も違うんだろうなぁ。」
「莉亜、あそこにセットで売ってるよ。あれがいいんじゃない?」
理人が指さした方には、6種類がセットになった箱詰めが陳列されていた。箱のデザインすらも可愛らしい。
が、価格はやはりと言うべきか。現実で学生の私は、懐が潤っている訳じゃない。他のお店も見たいし、ここは欲しい味だけを・・・。
「莉亜、一先ず、俺のウチに配送して貰っといたから。」
真剣に思案している私に声を掛けて来た理人。今、サラッと気になることを言われた。
「今、何って?」
「ん?俺のウチに送ったから、届いたら渡すから。」
「えっ?何で?」
私の問いに、理人は何でもないように言ってのけた。