第48章 現実ともう一度の初めて
嫌、突っ込んだらダメだ。理人だからってことで納得しよう。
自宅のマンションまで送ってくれ、別れ際、ガッツリキスされた。覚えのあるキスだったからこれも不思議だったのだけど。
部屋に戻るなり、へたり込んだ。物凄く疲れた気がする。スマホを鞄から取り出し、画面を見た。
一通のメールが来ていた。理人からのものだ。
『俺の事を受け入れてくれてありがとう。大事にする。』
短い文面だったけど、理人の優しさが垣間見えた瞬間だった。
ただ、理人の部屋が殺風景過ぎて驚いた。本当に必要最低限のものしか存在していなかった。
夕飯を食べてお風呂に入る。当たり前だけど、一人だ。リヒトはいない。何となく寂しい気持ちになってしまうのは、それだけリヒトの存在に慣れてしまっていたからだと思う。
ゲームの中では、無条件に愛してくれた。でも、現実ではどうだろう?理人は同じって言っていたけれど・・・。それに、いきなり泊りって・・・。
そういう事が全てじゃないにしても、目的の一つかもしれない。いや、散々したんだ。今更・・・でも、恥ずかしい。
この二日間、私は何とも言えない気持ちのまま過ごした。
そして、やってきた今日。約束の10分前に到着すると、直ぐに目の前に見覚えのある車が横付けされ窓が開いた。
「乗って。」
直ぐに乗り込むと、車は走りだした。
「おはようでいいのかな。」
「うん、おはよう。ねぇ、何処に行くの?」
「会社行ってランチ食べて、その後は遠出する。」
会社?会社って何?会社でランチ食べるの?遠出はともかく。
「会社は父親がいる会社。たまに、そこでバイトしてるんだよ。ランチ美味しいから楽しみにしてて。」
「お父さんと仲いいんだね。」
「普通。まぁ、色々勉強させて貰えてるところは感謝してる。」
そして、会社は大きかった。地下にある駐車場に入り、エレベーターで上の階へと向かった。理人から渡された来客用の身分証を渡され、広い食堂へと向かった。
ハッキリ言って、レストラン並みのメニューだった。チキンソテーと野菜の盛り合わせのセットにした。野菜はカラフルでとても美味しそうだ。スープはオニオンスープ。
理人も同じものをオーダーしては、窓側の席に座った。食べ始めた頃、誰かに声を掛けられた。一目見て、チャラそうな20代半ばの男性。