第48章 現実ともう一度の初めて
彼は私の手を引いて、近くの公園へと向かった。後ろ姿は髪色や髪型は違っていても、見上げる程の高い身長は同じだ。
公園の目印になるほどの大樹の木陰で彼は立ち止まり振り返った。
「久しぶりでいいのかな。って、泣きすぎ。まぁ、そういうところも可愛いのだけど。ねぇ、最後に俺が言ったこと、覚えてくれてる?」
私は頷いた。
「良かった。あぁ、言った通りに告白するけど、返事は一択しか受け付けないから。」
「えっ?一択?」
「莉亜が好き。俺と付き合おう。ゲームの通りに執着するし、余所見もさせない。俺は俺が大事だと思うものしか興味ないから、ゲームの中の俺と性格は変わらないよ。だから、浮気もしない。」
あ、瞳は同じ蜂蜜色だ。
「決まっているけど、返事聞かせて?」
本当の彼は、こんなに強引な性格なの?それでも、見た目は全然違うのに、同一人物だと思えてしまう。
「み、三浦くん・・・。」
「理人。で、返事聞かせて。」
「・・・ハイ。」
返事をすると、ゲームの時と同じようにハグされた。
「周りに声掛けてたんだ。莉亜を見かけたら連絡くれって。あ~、良かった。ずっと、会いたかったんだ。」
「く、苦しい・・・。」
「あぁ、ごめん。そうだ、見せたいものあるから、ウチに来て。」
手を引かれ、大きなマンションの一室へと連れられて行った。
「ここは?」
「俺のウチ。」
ウチと言ったけれど、一人暮らししている部屋だった。殺風景なくらいに必要最低限のものしか置かれていない部屋。
ソファーで待っていると、何かを持って戻って来た。
「えっ、このパッケージって。」
「そう。父親から貰った俺だけのゲーム。」
パッケージのイラストは、リヒトのものだった。パスワードは、学校でたまたまゲームの話しをして私が教えたもの。
起動したけれど、ゲームは何ら可笑しなところはなかった。
「不思議だよ。でも、何で誕生日にゲームって思ったけど、結果的に良かったって思ってる。ゲームの中の莉亜って、普段と変わらないと思うから。」
「普段の私?でも、話したことなんて・・・。」
「うん、あの時だけ。でも、俺は莉亜を見てたよ。」
全然気付かなかった。
「どうして、あんな胡散臭い男と付き合ってんのかって気になってた。」
「胡散臭いって・・・。」