第48章 現実ともう一度の初めて
目覚めた時に、何故か私はあの光景を思い出していた。元カレに組み敷かれ、喘ぐ且つての親友。いや、元カレと呼んでいいのかどうかも最早分からない。
だって、あの人は私のことなんて欠片も好きでは無かったのだから。そして、勝ち誇った顔の且つての親友。
そう言えば、そんな事を企んだ理由。
あぁ、そっか。やっかみだ。何話したんだっけ?挨拶くらいと思っていたけれど、他に何かあったかもしれない。
「確か・・・あっ!?思い出した。」
ゲームだ。私がやっているこの世界の元となるゲーム。隠しイベントや、物語の進め方・・・。
「三浦くん・・・。」
「思い出したんだね。」
顔を上げれば、リヒトが目を開けていた。
「リヒト?思い出したって・・・。」
「僕の名前は、三浦理人(りひと)。ごめんね、僕の世界に引き入れたばかりに。」
彼の父親は、このゲームの創始者の一人。彼が誕生日だと言うことで、彼だけのゲームを作って貰ったらしい。仕組みは分からないけれど、私のパスワードを登録したら、私同様にこの世界に飛ばされていた様だ。
飛ばされた理由は分からない。彼自身も、元の記憶が無かったのだから。
「元の世界に戻ったら、ちゃんと告白するよ。だから、僕以外・・・ううん、俺以外の誰にも心を預けないで。」
「えっ?それって・・・。」
「必ず、会いに行くから。俺を忘れないで。」
目の前のリヒトの姿が薄らぎ、代わりに見覚えのある姿がおぼろげに見えたかと思えば私は意識を手離した。
次に目覚めた時は・・・あの日から三日ばかり過ぎた夏休み。凝り固まった体をほぐしつつ、暫し呆然。
何気に視界に入ってきたゲーム機の画面には、リヒトと私の姿があった。が、それも元の画面へと変わって行った。
それから一週間後。平凡な毎日が過ぎていく。この日は、書店へと来ていた。あのゲームが特集されていた雑誌を手にして目を通す。
キャラクターの中に、当たり前だけれどリヒトも私もいない。あんなに揉めた双子もその他のキャラも普通に存在しているのに。
「やっと、見つけた。」
聞き間違えるはずのない、聞きたかった声。振り返れば、水色の髪ではない、色素の薄い栗色の髪の三浦くんがいた。
「今、話せる時間ある?」
声を出したかったけれど、発することが出来なかった。