第47章 農業生活 夏 十四日目
一口齧ってみれば、甘さ控えめの生クリームにチョコ、そして砕いたアーモンドの香りが広がった。
「美味しいっ!!リヒトは食べた?」
「僕はそう甘い物が得意じゃないから。」
「じゃあ、一口食べて?」
一口なら食べてくれるはず。口元に差し出せば、一口齧りついた。唇の端に付いた生クリームをペロッと舌先がなぞる。ただそれだけの事なのに、どうしてこうもドキッとさせられるのだろう。
「お、美味しいよね?」
「うん、で、どうして莉亜は頬が赤いのかな。」
「えっ?そ、そうかな?お、美味しいもの食べたからじゃない?」
理由と言える理由ではないものの、リヒトはそれ以上突っ込んでは来なかった。でも、気付かれているんだろうなぁ。
「莉亜さん、こんにちは。リヒトさん、オーダーです。」
「分かったよ。じゃあ、莉亜。また後でね。」
カミルと直ぐに行ってしまった。
「さて、次は・・・糸作り。」
綿などの原材料を機材に入れて、目的の糸を作っていく。
「青と緑・・・白に黄色、赤・・・紫。」
寒くなって来た様の為の通常より太目の糸を作り、紡がれたものから機織り機に掛けていく。秋はどれくらい寒くなるんだろう。そんなことを思いつつも、何色かの糸を作っていく。
「莉亜、ここにいたんだ。糸作ってたんだね。これは、寒い季節用ってことかな。」
「うん。綿もたくさん栽培してるから、寒い季節用の服を新調しておこうとかと思って。厚めの上着も欲しいものね。楽しみにしてて。」
「ありがとう。いつも感謝してるよ。さ、そろそろ夕飯にしない?寸胴鍋はキッチンへと運んであるから。」
機織り機に糸をセットしてから、私たちはキッチンへと向かった。ビーフシチューに合わせてお米パンやサラダなどを用意してくれていた。
リヒトがビーフシチューを口に入れる。少し驚いた後、顔を綻ばせた。良かった、気に入ってくれたようで安心する。
「この味は、莉亜ならではだな。凄く美味しい。ねぇ、お替りしていい?」
「うん。私も少しお替りしようかな。」
しっかり夕飯を取ってから、入浴タイム。
「フゥっ・・・。」
「リヒト、疲れてる?」
「少しね。」
体力的ではなく、精神的な疲れる事があったらしい。また、女性客だろうか?