第47章 農業生活 夏 十四日目
「リ、リヒト・・・私、温かい飲み物が欲しいな。」
「何がいい?」
少し考えて、ハーブティーをお願いした。そうすれば、当たり前にリヒトは離れる訳で・・・思わず、リヒトの体に抱き付いてしまう。
「あ、ごめん・・・。な、何でもないから。」
「・・・いい。」
「えっ?今、何って?」
リヒトの顔を見上がれば、少し顔を赤くして嬉しそうに微笑んでいた。
「可愛いって言ったんだよ。で、僕とハーブティーどっちがいい?」
「えっ?ど、どっちって・・・ハーブティー飲みたいかな。」
「残念。じゃあ、少し待ってて。」
少し自身の行動に恥ずかしくなったものの、カウンターでリヒトを見ていた。所作も美しい。
ハーブティーを飲んでいる間、リヒトは昼食作り。暖を取りつつ、リヒトの姿を目で追う。無意識でそれをやってしまう辺り、私も大概リヒトが好きで仕方ない。
「そうだ。三時頃、クレープの機材買ったから食べにおいで。」
「うん。」
お店の機材も、増えているらしい。
昼食は体を温める為の具沢山のスープもの。ホットサンドと温野菜でランチの時間。カミルも来たので三人で昼食の時間。
食事の後は、作業場に来た。今日が気が向いたので、ビーフシチュー作り。コトコトと煮込んだビーフはホロホロになっていて、口に入れると直ぐに解れてしまう。
「どうして、寸胴鍋で作ってしまったんだろう?」
自問自答しつつも、只管、煮詰めていく。が、途中で腰に回された腕と、背中に感じる体温に驚く私。
「っ!?リヒト?」
「うん。って、これ・・・ビーフシチュー?」
「そうだよ。夕飯に一緒に食べようね。」
原価のことを気にしたらとんでもないものだけど、まぁ気にしない。作る人の特権だ。
「ありがとう。凄くいい匂いがキッチンにまで漂って来てたから、気になって見に来たんだ。丁度、店の方も落ち着いているから。」
「バナナってどうなったの?」
「あぁ、バナナなら完売してるよ。」
開店して数時間。え、もう完売?
「シェリーさんとクベルがたくさん買ってくれたんだ。大きいサイズだったから、凄く喜んでいたよ。」
シェリーは美容の為?クベルは仕事の合間に簡単に栄養補給?
「で、クレープ持って来たよ。」
台の上には、クレープが置かれていた。分厚いバナナがトッピングされている。