第47章 農業生活 夏 十四日目
食事の後は、溺愛のキスをされて見送られた。水田は水を抑え、養蜂箱は静かだった。雨だから蜜蜂はお休みらしい。
畑の収穫は、今日は止めておこう。代わりに温室だ。雨の日の朝はカミルは来ない。収穫など作業がそう多くはないからだ。
そして。私は温室で栽培しているバナナを見ていた。一本の太さが通常の1.5倍ほどある。一房10本ほどだが、重量はずっしり感半端ない。食べ応えありそうだ。
そう、食べ応え・・・。籠に収穫したバナナが山盛り。
「無理だ、持ちあがらない。籠を分けた方がいいよね。」
空いた籠をキョロキョロと探していると、温室にリヒトが現れた。
「これはまた、随分成長したみたいだね。莉亜じゃ持ち上がらないでしょ。どうして、僕に甘えてくれないのかな?」
「籠に分配すれば大丈夫だよ?リヒトだって、働いているんだし。あ、でも、今度からお願いするね。」
何やら雲行きが怪しくなったので、素直に甘えることにした。
「莉亜は、このバナナの使い道を考えてる?」
「使い道?う~ん・・・勿論、そのまま食べることもしたいし、クレープに使うのもいいかな。後はミックスジュース。リヒトは何かあるの?」
「これは大きいから、一本ずつ店頭販売してもいいかなって。三房くらい分けて貰っていいかな?」
三房の一本ずつでの販売か・・・。結構、立派なんだよね。通常サイズの平均1.5倍だけど、全く同じじゃなくて・・・中には、とびきり立派なものもあって・・・。
「莉亜は、それがいいの?」
私の手には、一番大きいサイズのバナナが握り締められていた。好みとしては、熟れてしまう前のそこそこ青くて固いものがいい。
「うん、立派だし固くて甘すぎないところがいいかな。」
「へぇっ、立派で固いのが好みなんだ。」
何故か、リヒトの言葉に含みを感じるのは気のせいだろうか?いや、聞かない方がいいと危険信号を感じている。話しを流そう。
出荷箱に収めた後、キッチンへと残りを持ち帰る。一本ずつばらしてはカウンター脇の台にバナナを乗せた。
「それにしても、今日は冷えるね。」
ポロッと何気に呟いた私の元に、リヒトが近付いて来て抱き締められた。
「ホントだ、少し冷えてるね。僕で暖を取ればいいよ。」
リヒトで暖を取る・・・。確かに暖かい。そして、リヒトの手で背中を撫でられている。過保護だ。