第46章 農業生活 夏 十三日目
「莉亜っ!!」
リヒトが温室から私を呼んだ。
「どうかしたの?」
「お昼から、ワイン作るんだよね?」
「あ、うん。」
リヒトの背後には、籠に山盛りの果物が幾つもあった。手際が良くて吃驚だ。背も高いから、上の方まで届くし有難い。
「ごめん、少し多めにお願いしていいかな?」
「いいよ。」
夏だものね。冷えたワイン美味しいよね。果物の栽培って、時期が過ぎたら丸々一年先になってしまうから、最初は頑張ったっけ。今は、当たり前に実るから有難いけれど。
今日のランチは小鉢料理。数種類の中から、選択する様になっていた。メインは勿論、野菜料理が多数。贅沢に使われた野菜たちが、どれも美味しそうで・・・。
シャワー後、少しずつ全種類制覇させて貰いました。女子は好きだよね?そして、メインの豚肉のワイン煮がホロホロで美味。
「ごめん・・・いっぱい食べちゃった。」
「全然、構わないよ。まだ、調理はするから。」
リヒトは優しい。もっと食べさせようとするから、それは遠慮しておいた。さて、ワインは果物を機材に入れたらそれで終わりだ。そう時間が掛かるものではない。
ランチ後に作業していると、リヒトが現れた。どうしたんだろう?何処となく?いつもと違う様子。腰に腕を回され、抱き寄せられる。
「リヒト?」
「・・・コーラルが来てる。僕の目の前のカウンターに案内してるから。」
そう言った後、暫しそのまま・・・。ん?ピクリとも動かない。コーラルが来てるんだよね?
「待ってるんだよね?」
「・・・うん。」
そして、また暫しそのまま・・・。えっと、どうしよう?そう思っていたら、腕が離れた。そして、指先を絡ませてくる。
「追い出そうか?」
「えっ?あ、だ、大丈夫だよ。リヒトも傍にいるんだから。」
何とか宥めては、カウンターへと向かった。だから、リヒト・・・そんな冷やかに調理しながらコーラルを見ないで上げて欲しいんだけど。
「お待たせしました。何か、ご用ですか?」
「突然すまない。手紙を読ませて貰った。今回のことは本当に申し訳なかった。おかげで色々と勉強させて貰った。改めて、莉亜の尋常さが少し理解出来た気がする。今後も村の為に尽力すると誓う。俺に出来ることがあるなら、何でも言って欲しい。今日はそれだけを言いたかった。本当にありがとう。」