第5章 農業生活五日目
「僕を嫌う人は・・・たくさんいたよ。打ちのめされるのに十分なくらいには。」
えっ?打ちのめされるって何?
「じゃあ、これからは幸せな事ばかりが待ってますよ。」
「それって・・・莉亜が、僕を幸せにしてくれるってこと?」
ん?何でそうなるの?私・・・何か間違えた?それを悟った時には、もう手遅れだと気付いた。リヒトの瞳が、私の目を反らすことをさせてくれなかった。
「好きだよ、莉亜。莉亜のひた向きさや一生懸命さ、優しいところも可愛いところも全部好きだ。」
あれ?私・・・新キャラ一人目に、捕獲されたの?比べたらいけないけど、元彼なんか霞むくらいのイケメン。元クラスメイトの学校一イケメンに匹敵するくらいに。
私、そんなにイケメン好きだったっけ?嫌、リヒトは別枠だよ。この世界に来て、五日目で恋人ゲット?
「莉亜・・・。」
甘く名を呼ぶリヒト。私は、白旗を上げた。この後、また新キャラのイケメンが現れるかもしれない。でも、きっと、私はリヒトがいいと思うのだろうと・・・後悔しないのだろうと思ったんだ。
あれ?
いつの間にか抱きしめられ、キスされていた。リヒトの顔が近い。あ~、綺麗な顔・・・。ん?えっと・・・リヒト、意外に肉食系?
「先に言っておくよ。僕は莉亜と結婚したい。」
「えっ?結婚?」
「言ったよね?莉亜のお婿さんになるって。」
こんなにイケメンなのに、執着心かなり強め。それに・・・また、キスされてる。私、全然拒んでない。リヒト・・・キスが上手いんだけど。
「嬉しいよ。莉亜・・・好きだよ。」
何か、溺愛系?こんなイケメンに溺愛って、どんなご褒美?交際も結婚願望もなかった反動なのか、リヒトの溺愛ぶりは半端ないことを思い知ることに・・・。
そこへ、燻製機のブザーの音が聞こえてきた。どうやら、昨日仕込んだものが出来上がったようだ。これで、少し冷静になれればいいなと思う。
作業場には、いい匂いが立ち込めていた。燻製機を開けると、香ばしい香りが溢れてきた。二人で試食タイム。そして、思い知るんだ・・・。リヒトの距離が皆無だと。
「うん、美味しいね。ね?莉亜。」
とびきりのイケメンスマイルを向けられる。つい見惚れてしまった私に、リヒトは目を細めてキスしてきた。何か、バカップルみたいって思うのに、拒否できない私。