第44章 農業生活 夏 十一日目 R指定
宿屋前には、出店をやっていた。
「いらっしゃい、お二人さん。」
「「こんにちは。」」
出店には、この村にはない雑貨などが並んでいた。その中には花柄のガマ口の財布があった。
「これ可愛いなぁ。あ、この風鈴も可愛い。」
つい、はしゃいで品物を物色していた。リヒトは、レントと話し中。私が見ていた事に気付いて、ニッコリと笑顔を見せてくれた。途端、周りの観光客の女性から黄色い声が上がる。
それを目の当たりにして、私は眉を八の字にしてしまった。要は、ヤキモチだ。女性客たちは、リヒトをチラチラと見ている。それに、増々私の気持ちが沈み、俯いてしまう。
が、直ぐに肩を抱き寄せられ顔を上げた。直ぐ傍に、リヒトの顔があった。愛おしそうに私を見詰めるその瞳に、ヤキモチを妬いてしまった事に恥ずかしくなる。
そして、女性客たちからの視線が痛い。それも、直ぐに収まったけれど・・・。何やら急に、青い顔をして目を反らした女性客たち。疑問に思いつつ、リヒトを見上げる。
「気に入ったものあった?」
「あ、うん。ガマ口のお財布可愛いなって思って。リヒトは?」
「僕は風鈴かな。二階にも付けようかと思って。」
リヒトの手には、私が見ていた風鈴があった。可愛い金魚の絵柄のものだ。リヒトが買ってくれ、出店を後にした。私の手は、リヒトに恋人繋ぎで握られている。
でも、女性客の人たち、急に青い顔したのはどうしてだろう?私は知らなかった。リヒトの射抜かんばかりの鋭い目が向けられていたことに・・・。
恒例のポップコーンと飲み物を購入し、木陰にあるベンチに座った。どこへ行っても、女性客の視線を集めるリヒト。リヒトは全然、気にしていない。
「はい、あ~ん。」
声につられて口を開ける。そう言えば、ここは外だった。慣れとは怖い。無条件に口を開けてしまう私って・・・。そして、それを羨ましそうに見られている。
「莉亜、僕にも食べさせて?」
これは、周りに対する牽制?それが目的?おずおずとリヒトの口元に持っていけば、薄く開いた口がポップコーンを捉える。それと共に、私の指先をペロッと舐める事も忘れない。
そして私は・・・羞恥に震えている。家の中、いや、まだ敷地内なら構わない。ここは、人が通る道の傍ら。
肩を引き寄せられ、私の頭がリヒトの首筋に寄りかかる。