第44章 農業生活 夏 十一日目 R指定
私の手から、まつたけが奪われる。
「うん、立派なサイズだけど・・・僕の方が・・・ね?」
何がとは言わない。そして、私も聞けない。
「何なら、もう一回確かめる?」
「えっ?あ、い、今はダメ!!よ、よ、夜にね?ね?」
「嫌、とは言わないんだ。じゃあ、夜にね?莉亜がそう願うなら、僕はその願いを叶えるよ。」
何か違う・・・。そう思ったけれど、リヒトの無駄に妖しい笑顔に反論は止めておいた。
「でも・・・僕のを思い出して、あんな顔してたんだね。」
何故に、そう楽しそうなんだろう?
「そ、それより、何か用だったんじゃないの?」
「あぁ、メロンと西瓜が・・・凄い事になってるよ。」
リヒトと共に畑に行けば、サイズ感が可笑しいメロンと西瓜が鎮座していた。通常サイズの1.5倍ほどの大きさ。
「幾つかは出荷箱に入れたけど、これはまた随分高額な収入になりそうだね。最後は、ここにお城でも建てたいのかな?」
「言いすぎだよ、お城だなんて。そんな柄じゃないし、私になんて似合わない。」
リヒトなら兎も角。リヒトなら、リアルに王子様で通用しそうだけど。
「そうかな?僕は莉亜のお姫様、凄く似合うと思うけど。さぁ、そろそろ昼食にしようか。」
二人でシャワーを浴び、私は定位置でリヒトを眺めていた。着やせする鍛えられた体、スラっと長い手足。そして水色の髪と蜂蜜色の瞳。正に、王子様だよね。
「川遊びは明日にしようね。」
「うん。お昼から、リヒトは何か遣りたいことあるの?」
何気に尋ねて見れば、私をジッと見詰め綺麗な目を細めた。
「何だと思う?」
質問を質問で返された。リヒトがやりたいことって何だろう?外出・・・は、何となく想像できない。でも、二人で出掛けることは嫌ではないはず?
「宿屋でちょっとしたイベントやるみたいなんだ。レントが良かったらって誘ってくれたから。」
「そっか。リヒト出掛けちゃうんだね。じゃあ、私は何しようかなぁ。」
「莉亜も一緒に行くんだよ?僕一人で行かなければならないのなら、行く訳ないよ。」
何当たり前なことを・・・と、続きそうな言葉に私は目を丸くした。そっか・・・一人なら、行く訳ないんだ。いいのかな、それで。たまには、男同士でとか・・・。
昼食のカルボナーラや野菜サラダを食べて、リヒトと共に宿屋へと出掛けた。