第43章 農業生活 夏 十日目
所狭しにトマトの実だらけである。気が遠くなりそうだ。
「あ、莉亜。お疲れ様。トマト見てたの?でも、向こうも見てごらん?玉蜀黍も凄く立派だよ。」
通常の倍ほどのサイズの玉蜀黍が、籠からはみ出して存在感をアピールしているようだ。
「ねぇ・・・こんなに大きくなったら、味が悪くなるんじゃ・・・。」
「美味しかったよ?生でもあの玉蜀黍は食べられるから試食したんだけど、とっても瑞々しくて美味しいよ。ポップコーンのお店に出荷したら、喜んでくれると思うよ。僕も焼き玉蜀黍にしようかなって思ってるんだ。」
リヒトが少々、興奮気味。私は目の前に実っている巨大トマトをもぎ取っては、軽く拭いてかぶりついた。
「んんんんっ!!!何これ、何これっ!!甘い。とっても甘いよ。カミルくんも、食べていいよ。」
「じゃあ、頂きます。」
カミルは収穫した巨大トマトに齧り付き、珍しく目を見開いて悶えているようだった。私ももう一口とかぶりつこうとしたら、リヒトに腕を掴まれて齧られた。
「んんっ・・・んっ・・・これはいい。甘くて美味しいね。今日はトマトづくしかな。」
リヒトの口から、トマト料理のメニューが並べられている。
「莉亜は何がいい?」
「ミネストローネと、カプレーゼかな。いいチーズもあるから美味しいと思う。オリーブオイルもあったよね?」
料理の話に盛り上がる私たち。
「カミル、そろそろシャワー浴びておいで。後の片付けはやっておくから。」
「分かりました。お先に。」
リヒトは巨大玉蜀黍が入った籠を持ち上げては、二人で家の中に戻った。私たちの手には、大量の野菜。
「リヒト、カミルくんと一緒に先にシャワー浴びて来たら?」
「ううん、莉亜と一緒がいい。」
そ、そうですか。そんなキラキラしたいい笑顔で言われたら、もうそれ以上は何も言えません。それでも、カミルは直ぐに戻って来て、リヒトはカミルに指示をだしていた。
そして・・・私はというと、リヒトに洗われる始末。それも丁寧に・・・。あ、ありがとうございます。
キッチンに戻れば、輪切りされたトマトが綺麗に容器の中に収まっていた。更に、角切りされたトマトが大量。ミネストローネを作ってくれるらしい。
「莉亜、果実水だよ。」
「ありがとう、リヒト。頂きます。」
リヒトは一気飲みしてから、調理に取り掛かった。