第41章 農業生活 夏 八日目
「あ、ありがとう。ねぇ、カミルくん。街で居た時、リヒトに女性の影とか無かったの?」
「無いですね。」
間を置くことなく、返答された。潔いくらいに、キッパリだ。
「あの街のイベントで、莉亜さんの野菜を食べた時のリヒトさんは凄かったです。俺は食べられなかったんで残念だと思ってたんですけど、今ならその気持ちが凄くわかります。」
「凄かったって、どんな風に?」
「野菜の出処を調べて、莉亜さんが住む村に移住してしまうくらいと言えば分かってくれますか?」
そ、そう・・・。うん、確かに、それは凄い。
「でも、俺・・・あの時、リヒトさんに捨てられそうになったんですよね。どれだけリヒトさんに泣きついたか。」
「私のこと恨んでる?」
「最初は・・・でも、今は違います。俺にとって莉亜さんも、尊敬に値する一人です。」
恨まれた・・・何か、ごめん。リヒトも言ってたっけ。カミルを街に残そうとしてたって。
「カミルくんは、どうやってリヒトと知り合ったの?」
「俺・・・両親から、ほったらかしにされてたんです。食事も満足に与えられなくて、いつも空腹でガリガリでした。そんな俺の近所に引っ越してきたリヒトさんが、気遣ってくれたんです。」
想像以上に重い話だった。そして、そんな話だから、リヒトに懐いたんだね。
「俺にとってリヒトさんは、命の恩人ですから。」
「そう。何か・・・ごめんね。」
「言ったでしょう?今は、尊敬してるって。結果的に、この村に戻って来た事になりましたけど、それも運命だったんじゃないかって思ってます。祖母のことは、気になってましたから。」
おばあちゃんっ子だったのかな?
「莉亜、カミル。ご飯だよ。」
「「は~い!!」」
リヒトの呼びかけに答えて、家へと向かう。
リヒトが淹れてくれた冷たいお茶は、今日も喉越しが良くてサッパリする。そんな私を、リヒトがじっと見ていた。カミルは先にシャワー中だ。
「どうかしたの?」
「随分、カミルと仲が良くなったんだなって思って。」
会話の内容、知ってる?驚いてリヒトを見詰めた。
「どうして分かるのかって?カミルとは付き合いがこれでも長いからね。優しい顔してたよ、さっきのカミル。ごめんね・・・僕が、あんな決断しようとしたから。」
「気にしてないよ。」