第39章 農業生活 夏 六日目
代わりにリヒトが受け取り、コーラルは直ぐに帰って行った。リヒトから受け取ったその考案・対策と思われる書類。
「お昼から少しずつ読ませて貰うよ。」
「・・・・・・。」
珍しくリヒトは真顔のまま。まだ、反論しないだけいいのかもしれないけれど、本当に珍しい。
「リヒト、ココ。」
自分の唇を指でトントンとすれば、小さく溜め息をついて抱き締めて来たリヒト。
「僕としては、許さなくてもいいんだけど。」
「うん。ありがとう、リヒト。」
私が出した詫び状と言う名の対策立案書。だからと言って、必ず許す事をしなくてもいいとリヒトは言ってくれたその気持ちが嬉しい。
「あ、キスしていいの?ここ外だけど・・・。」
「・・・そ、そうだった。い、今のなっ!?」
色んな物が削られるような、熱いキスをリヒトからされる。そして、終わった頃には私もその気になってしまっていた。
「可愛い、僕の莉亜。名残惜しいけど、仕事だね。気を付けてね。」
「うん。」
「あ、終わりました?」
突然の声に、私は飛び上がって驚いた。そこにいたのは、飄々としたカミルの姿だった。そう、バッチリ見られていた。
「おはよう、カミル。待たせてごめん。」
「いえ。」
私は羞恥で水田へと一目散に走って行った。何、あの二人。何であんなに普通なの。ひょっとして、街にいたときから普段からあんな感じだったの?いつもの事だったとか?
ううん、リヒトはそんなことしないと思う。カミルは・・・ああいう、動じないキャラだ。それでも、恥ずかしいものは恥ずかしい。でも、何で朝からカミルが?
「あ・・・収穫手伝ってくれるって言ってたっけ。恥ずかしいけど、折角来てくれたんだから、無視するわけにもいかない。もういい、気にしないでおこう。」
水田に肥料を蒔く為に追加をしてから、雑草を抜く。早いもので、そろそろ稲の花が咲きそうだ。そう言えば、一面金色の稲穂の風景って好きなんだよね。
養蜂箱も何事もなく順調で、夏の茶摘みも滞りなく。畑の方はリヒトたちが何とかやってくれていると思う。そして、きのこ小屋。
「きのこも出荷だな。さ、頑張ろう。」
籠には山盛りのきのこ。今回は大きいサイズのみ収穫しては、出荷箱へと運んだ。そして、出荷箱には南瓜や玉蜀黍、玉葱が入っていた。仕事が早くて助かる。