第4章 農業生活四日目
「それ、ケビンさんに渡していいの?」
「はい。いいですよ。」
外で待っているケビンに、タッパーのまま渡した。ラッピングなんてものはない。そこは諦めて欲しい。
「ケビンさん、これでいいですか?」
「美味そうだな。でも、10個もいいのか?」
「いいですよ。また、作りますから。はい、どうぞ。」
タッパーを受け取ったケビンは、財布を出した。またしても、お金を払おうとする。そして、単価を聞いてひっくり返りそうになった。
「1個が500円だから、10個で5000円だな。」
どんなぼったくりだよ!!心の中で叫んだ。
「誕生日のお祝いですから、受け取って貰うだけでいいですよ。」
「いや、それはダメだ。俺が何もしていないことになるだろ。」
そう言われたら、確かに・・・。
「だったら、値引きすればいいのでは?」
「じゃあ、1000円で。」
1個100円の換算だ。私は村の住人から、大儲けしようと思っていないからそれでいい。ケビンはびっくりした顔をした後、ちょっと感極まっていた様だ。
どうやら、懐が寂しかったらしい。これも大事そうに抱えて、帰っていった。そこで、思う。
「豆大福・・・食べたいかも。」
小豆は今まで栽培したものが、倉庫にあったはず。もち米も然り。
「莉亜、豆大福なら僕が作るよ?」
「えっ、お願いします。」
即答の私に笑うリヒト。だって、食べたかったんだもん。さて、作業場での燻製作りだ。幾つかの材料を持って、先に作業場へと向かう。
後片付けをやって貰っている間、作業台の上には岩塩を削ったもの、豚肉、香草、鱒、煮卵を準備。そして、熟成室にあるホールのチーズも持ってきた。
後から来たリヒトがチーズを見て、目を丸くしていた。通常より小ぶりだけど、やってみたかった。あ、そうそう。桜チップも用意だ。
鱒はリヒトにお願いして、私は豚肉をやることになった。削った岩塩と香草を混ぜ合わせたものを塗り込んでいく。これも、何となくこんな感じ?でやっている。
豚肉と鱒に使う配合は、別々にしてある。塊肉に刷り込み糸で巻き付ける。まさしくボンレスハム状態。今回は10本の豚肉を使った。
後は中には材料を入れて、最後に削った岩塩を壺に入れたものを設置。燻すと岩塩も美味しくなる・・・らしい。ゲームでは、価値が上がったから、真似してみたのだ。