第36章 農業生活 夏 三日目
「体の方は大丈夫?」
「えっ、あ・・・うん、ヘーキとか言い難いかも。」
「ごめんね?つい、拒否られないことを良いことにいっぱいしちゃったから。」
ごめんって言いながら、その色気たっぷりの目を向けられたら何も言えない。きっと、それを分かって言っているのだと思う。でも、そういうズルいところも大好きだ。
「今日はお昼から何をするの?」
「果実入りのヨーグルトを作ろうと思ってる。」
特大の容器に盛り沢山。小分けより、その方が楽。ただ、重い。
「あまり無理はしないでね?」
「うん。お店の分も作っておくね。」
「ありがとう、助かるよ。」
今朝のメニューは、分厚いハムとチーズとレタスなどを挟んだ分厚いサンドイッチ。具沢山のスープと夏野菜の大盛りサラダ。どうやら、リヒトは朝から物凄くお腹が減っているらしい。
たくさん食べている間も、いつもと同じく仲睦まじく撫でられたり、触られたり・・・たまに、何か物欲しそうな眼差しを向けられたけれど気付かないフリ。
「じゃあ、畑に行ってくるね。」
「気を付けてね。」
リヒトに見送られ、恒例の水田。緑の色が濃い。一体、どれだけ収穫出来るのだろう?もち米の方も、色よく育って来ている。米粉にもしたいから、本当に秋が楽しみだ。
それから、養蜂箱の見回り。何処となく甘いいい香りが漂ってくる。これも、秋が楽しみだ。まだ、夏が始まったばかりだけど。そして、夏の畑。育ちがいい。
そう言えば、通常の肥料とは別枠のサイズが大きくなる特別な肥料があったっけ。折角なので、肥料を入れるタンクにブレンドしておいた。
「週明けくらいには収穫出来そうかな。早いなあ・・・。嬉しいけど。」
畑の周りには花と果樹も存在している。そう多くはないものの、果物は実ればカラフルな風景となる。そして今・・・視界に入って来たのは、桃色のあの好物の一つ。桃である。
辺り一帯が甘い香りで充満している。嬉々として家に戻れば、リヒトに無理だと容赦ない一言が浴びせられた。仕方がないので、大半は出荷箱へと収納された。
「莉亜、明日は店も休みだから、一度、断捨離しようか。ほら、西瓜やメロンもあんなに栽培しているんだよ?収納が追い付かないよね。それに、明日は雨みたいだから家でゆっくりしよう、」
「うん、分かった。あ、冷蔵庫・・・。」