第35章 農業生活 夏 二日目
三人でランチの後、私は作業場に来た。牛乳を機材に設置して、生クリーム三昧だ。フレッシュな甘くていい香りがする。出来立ての生クリームに果汁を混ぜて、撹拌ミキサーでメレンゲを作ってみた。
果汁の素は枇杷。いつも思うけど、もっと実が大きければいいのに。そして、安定の高額商品だ。でも、そんなことは私は気にしない。泡だったメレンゲを味見すると・・・思わず力が抜けそうになった。
「ハァッ、何コレ・・・超美味しいっ・・・。もう一口。」
もう一口は、本当の意味でもう一口に止め置いた。前の私なら、もう一口が何回もあった気がする。では、何故、我慢できるようになったのか・・・。
そんなの、リヒトに全部見られるからに決まってる。好きな人には、いつまでも綺麗とか可愛いとか言われたい。そんな乙女心を最大限に活かしていられるからこそ、留まることが出来るのだと思う。
自分のお腹を摘まむ。ま、まだ、大丈夫だよね?リヒトみたいにシックスパックなんて出来ないけど、私も運動でもした方がいいのだろうか?いや、リヒトは料理人だ。料理は力仕事もあるから・・・。
「加工品頑張ったら、引き締まるかな?」
そういう理由で、気付いたら・・・作業台の上には、カラフルなメレンゲが入った容器が並んでいた。因みに、味見のみ一回ずつしている。いいよね、それくらいなら。本当はもっと食べたいのだけど。
「あ、こんな時間。リヒトのところに行かなくちゃ。」
容器を持って、キッチンへと向かう。キッチンでは、リヒトはパンケーキを焼いていて、カミルは給仕に忙しそうにしていた。
「リヒト、手伝いに来たよ~。」
「あ、助かる・・・えっと、それは?」
「果汁入りのメレンゲだよ。作ってみたの。」
リヒトの瞳がキラキラした。
「莉亜、お願い。試食したい。」
リヒトにお願いされて、断わる選択肢なんてない。スプーンでメレンゲ掬い、リヒトの口に入れてあげる。
「んっ!?枇杷の味がする。美味しい。それに、仄かにオレンジ色だね。見た目もいい。ねぇ、パンケーキに使っていいかな?」
「いいよ。じゃあ、私は洗い物してるね。」
パンケーキの注文者は、シノンだったらしい。あの人も甘党だから、喜んでくれるといいなと思う。そして、カミルがさっきからやたら視線を向けて来る。そう言えば、カミルも隠しているらしいけれど大の甘党だったね。