第33章 農業生活三十日目 後編
手を洗っては、作り立ての果汁を持って、キッチンへと向かった。キッチン前のカウンターでは、先にカミルが休憩していた。
「お疲れ様、カミルくん。」
「お疲れ様です。それ・・・檸檬の果汁ですか?爽やかないい香りがしますね。」
カウンターで待っていると、直ぐにレモネードを作ってくれた。リヒトも同じく、レモネードを口にしている。リクエスト通りの、糖分少な目の私好みの味。
「リヒト、私好み!!。すっごく美味しい。」
「カミルも飲んでみる?」
表情の起伏はそう大きくないけれど、喜んでいるのは分かる。本当に可愛いところがあるなぁ。
「莉亜、これ食べて?」
目の前に出してくれたのは、ドライフルーツがふんだんに入ったパウンドケーキ。喜んで口に入れる。今の私に躊躇という文字はない。
「ん~っ!!すっごく美味しいっ!!!お酒の味がする。」
「うん。オレンジのワインを入れてみたんだ。」
ケーキが分厚く切り分けられているのも少し嬉しい。それでも、お皿は直ぐに空っぽ。お替りするかと聞いてくれたけど、それは辞退させてもらった。調子に乗ると太る。
どういう仕組みか分からないけれど、釜でパウンドケーキが短時間で焼けるらしい。私は単純にピザを想像していたんだけど。機会があれば、私もチャレンジしてみようかな。
ピザと言ったら、チーズは必需品。牛乳はたくさんあるから、加工品も豊富に作る事が出来る。
「リヒト、今度、パフェ食べたい。果物いっぱいのがいい。」
「フフ、それは美味しそうだね。店のメニューにも入れてみようかな。カミルも好きだったよね?」
カミルはいきなりのカミングアウトに微妙な顔。でも、確かに頷いていた。好みがバレたのが恥ずかしいのかな?気にしなくていいのに。
「そうだ。夕食の事だけど、カミルくんの分くらいならあるよね?お店の再開店祝いに一緒にどうかな?」
「勿論、余るくらいにあるよ。カミル、莉亜がそう言ってくれてるから今晩、一緒に食べる?松茸のフルコースだよ。」
カミルは呆然。若干、戸惑いを隠せていない。
「え、そんな高価なメニュー・・・本当にいいんですか?あ、ひょっとして、俺って試されてる?」
ゲームの世界では、松茸のフルコースというメニューは無い。もし、あったとしたら幾らくらいの金額設定になるのやら?