第33章 農業生活三十日目 後編
残りの春野菜の収穫に取り掛かる。畑の一角には、ラディッシュがいっぱい。籠には、鮮やかなラディシュのカラーで敷き詰められていた。
んっ、やっぱり美味しい。シャリシャリ言わせながら、収穫して空いたスペースを耕していく。西瓜とメロンの種を蒔く。絶対に外せないものの野菜たち。
取り分け、西瓜は飲み物替わりにいける。もう、今直ぐでも西瓜が食べたい。それに、西瓜もメロンも出荷単価が高額だったはず。ご機嫌で種蒔きをを終わらせ、温室へと入った。
緑の中に一際目立つ、黄色の果実。それは、檸檬。暑くなったら、使いたくなるよね?ただ、通常のサイズより二回りくらい大きいサイズ。
と言うことで、作業場に来ました!!10個の檸檬を只管搾る。そもそも、何でこんなにサイズが大きいんだろう?私の手のサイズでは余ってしまう。故に、早い段階で手が怠い。
もっと、檸檬が収穫出来たら、蜂蜜檸檬だって作りたいし、冬には檸檬鍋だって食べたい。
「手が・・・痛い。」
力を入れて絞っていたせいか、指先が固まっている。リヒトくらい手が大きかったら、こういう作業も楽なのに・・・。
「リヒト・・・手を貸して欲しい。」
つい、独り言の弱音を吐く。
「いいよ。」
まさかの声に体が跳ねる。振り返ると、ドアにもたれかかってこっちを見ているリヒトがいた。
「い、いつからそこに!?」
「つい、二・三分前かな。」
傍に来ると、手を差し出されたので檸檬を渡した。慣れた手つきで、見る見るうちに檸檬が消費されていった。やっぱり、リヒトの手が欲しい。
自分の手と合わせて比べてみれば、第一関節分以上、余裕で長さが違う。それに・・・リヒトの手から檸檬のいい香りがする。つい、匂いを嗅いでしまう。
そして・・・ほんの出来心で、ペロッと舐めてしまった。
「酸っぱっ!!あ、ごめん・・・舐めちゃった。」
「フフ、ゾクゾクしちゃった。」
満面の笑顔だ。不愉快でも不快でもない笑顔だ。そして、私が舐めた指先を同じ様にペロッと舐めた。
「ん、酸っぱいね。檸檬か・・・そうだな、檸檬バターでも作ろうか。ステーキにも合うよね。」
「私はレモネードが飲みたい。糖分は少な目で。」
「あ、そうそう。休憩するから、莉亜を誘いに来たんだ。キッチンでレモネード作ってあげるからおいでよ。」